【Music】2010年代のベストアルバム<ガーリエンヌ編>

今月いっぱいで、ついに「’10年代」が終了。ちょっとした総括にふさわしい時期でもあります。

ということでディケイドのMYベストを振り返る企画をお送りします。まずはガーリエンヌの「2010年代のベストアルバム」をどうぞ。

カニエ・ウエスト、ジャネール・モネイ、ラナ・デル・レイ、ロード…2010年代を彩った名盤たち

10. Wildheart/Miguel(2015)
2012年、Nasのアルバム『Life Is Good』にフィーチャーされていて存在を知り、本人名義の「Adorn」にハマって、それ以来ずっと安定して聴き続けているアーティスト。
『Kaleidoscope Dream』以降のアルバムは甲乙つけがたいけど、「あ、R&Bだけじゃなくて、こんなに音楽の幅が広い人なんだ!」と感心させられた本作をここでは選びました。


プリンスを意識したようなアートワークのとおり、セクシャルで親密、そしてロック要素も強い。2019年10月の初来日公演も素晴らしかった!(今気づいたけど、このビデオに主演している女性、ジジ・ハディットだ)

9. The Hunger Games:Mockingjay,Pt 1/Various Artsits(2014)
ディケイドを代表する映画『ハンガー・ゲーム』が、これまたディケイドを代表するアーティストLordeを監修に据えたサウンドトラック。Ariana Grande、Haim、CHVRCHES、Charli XCX、Tinashe、Pusha T、Major Lazerといった適材適所かつ旬の人材をそろえた素晴らしい仕事です。メンツは華やかだけど、ヒリヒリと一触即発しそうな気配が漂っている。

中でも出色なのがアルバムのリードトラックであるこちら。何かが這い寄ってくるようなサウンドに乗せて、闘いに向かうヒロインの心情が描かれている。Lordeはこういう、ドラマ性のある曲が抜群にうまいですね。

8. Norman Fucking Rockwell/Lana Del Rey(2019)
悲しみをたたえつつ、けっして弱くはない女性像を歌わせたら右に出る者がいない女王。
多作であるというのは、それだけでひとつの能力ですが、2012年に『Born To Die』でデビューしてからなんとすでに5枚目のアルバムです(本人は「わたし、10年に1度しか新譜を出しません」みたいな雰囲気なのに…)。その間、映画のサントラや客演仕事もしているという。

これまでアルバム、曲によってクオリティにバラつきがあったものの、本作は全編通して文句なし、ディケイドの終わりに、ついに決定版が出たなという印象。ただ純粋に褒めながら聴き惚れたいと思います。

7. Banshee/Kendra Morris(2012)
はすっぱでジャジーでブルージー、サイケデリック、そして懐が深い…つまりめちゃくちゃいい女のアルバム。
ヴィンテージ・ソウル風でありながらけっして懐古趣味ではなく、DJプレミアによるリミックス(「Concrete Waves」)が話題を呼んだのも当然と言える。ちなみにジャケット写真の背景は本人の家だそうで、剥製を集めるのが趣味だとか。


デビッド・ボウイ「Space Oddity」、ピンク・フロイド「Shine On You Crazy Diamond」、レディオヘッド「Karma Police」(!)などをカバーしたアルバム『Mockinbird』(2013)も最高なのでぜひ聴いてほしい。
beatink! 日本に呼んでくれ~!

6. 4 Walls/f(x)(2015)
今年起きたさまざまなことを考えると、本作にもつい余計な“意味”を付与しそうになる…けれども、バッキバキにクールで洗練されていて、同時に可憐さやキュートさも成立させている稀有なガールポップアルバム、という以上の説明はたぶん不要。

2016年の日本公演を見られたこと、本当に本当に心の底からよかったと思う。この世に永遠など何ひとつないが、あのとき会場全体で共有した、言葉にできない神聖な感銘を忘れることはきっとない。


それにしても、あまりにも浮世離れして美しいクリスタル様の尊さといったら。
僭越ながらファッションを真似っこした記事【Fashion】Get The Styles Of Krystal-f(x)! なりきりクリスタル もございます。

5. 2 Cool 4 School/A.Y.A(2015)
花園magazineのIt Girl。10代の頃から彼女を知っていたからこそ、本作が完成して嬉しかった。クリスティーナ・アギレラ、ビヨンセ、リアーナといったパワフルな女性アーティストを愛聴してきた素養と、スウィートでセクシー、ロック、そしてとことん真面目な人間性がそのまま昇華されているから。

のちの『Lil Romance』(2019)や『Pulp Fiction 2.0』(2018)に比べるとDIY感が強くて「若いな」と思うけど、実際そのとおりで、22歳の燃える魂がここには詰まっている。

She ain’t Plastic,She’s so Elastic,She won’t stay here,She’ll keep movin on!

アルバムリリース時のインタビュー【Music】A.Y.A『2 Cool 4 School』/”普通”になんて馴染めなくても もぜひご覧ください。

4. I Like It When You Sleep, for You Are So Beautiful Yet So Unaware of It/The 1975(2016)
10年代をかけて、もっとも重要なロックバンドに上り詰めたThe 1975のセカンド。
ピンクで統一されたアートワークに象徴されるように、パッと聴いた印象は80年代の雰囲気があり華やかで軽快。同時に緻密に作り込んであり、インスト曲の配置など、アルバム全体のバランスも絶妙でした(ちょっと長いけど)。

このバンドが奏でる音は若くてフレッシュだけど、実は荒削りな部分がまったくなく、つねに確信犯。それは、自分たちが時代を切り拓いていくことに自覚的なことの証左にほかなりません。

3.Dirty Computer/Janelle Monae(2018)
『The ArchiAndroid』(2010)とどっちにしようか迷った…2枚のアルバムの合わせ技で3位、というわけではなく、それぞれが名盤。『The Electoric Lady』(2013)も大好きだし、そもそもジャネール・モネイという人の存在そのものが本当に素晴らしい。

コンセプチュアルであることに重きを置いていた過去作に比べ、本作で響くのは、より自由奔放に、ナチュラルになった歌声。とはいえ、あらゆるサウンドの垣根の上を、蝶のようにひらりと舞い、かつ蜂のように鋭く刺すスタイルには変わりない。

オリジナリティあふれる音楽、パフォーマンス時のビジュアル、メッセージ性の強い歌詞…高度な次元のエンターテイメントを送り続けるジャネールは、次の10年間も、世界中の人々をインスパイアする存在であることでしょう。

2. Kiss Land/The Weeknd(2013)
華々しい活躍の彼のキャリアでは、あまり語られることのない本作ですが、個人的には群を抜いてしびれる。
本来の持ち味である密室性が、『ブレードランナー』的世界観のもとで妖しく花開いていて、脳内世界の路地裏に迷い込んだような気分に。

UKロックの影響もふんだんに感じさせるリードシングル「Belong To The World」。雷鳴が轟いて始まるこの曲だけで、短篇SF映画のよう。

本人はこのアルバムがそこまで売れなかったことで、ポップ方面に舵を切ったそうなのだけど、私は今後もしつこく聴き続けると思う。

1. My Beautiful Dark Twisted Fantasy/Kanye West(2010)
文句なし、ぶっちぎりの金字塔。プログレッシブ・ヒップホップの最高傑作。私の中では音楽という概念を超えて、コッポラ『地獄の黙示録』や黒澤明『乱』と同じような位置にあります。

リアーナやJay-Z、エルトン・ジョンなどの豪華ゲスト、キング・クリムゾンやエイフェックス・ツインのサンプリング、伝説的詩人ギル・スコット・ヘロンの朗読…豪華というよりも「手に負えない」ほどの情報量なのに、すべてがカニエ・ウエストというフィルターを通し、再構成され、まったく新しい音楽として提示されている。
極彩色の曼荼羅であり、生き延びるためのマントラであり、自身を一度炎に投げ入れることでしか生まれない音楽。どれだけ自分の内面を掘り下げればいいのか、どれだけ世界と対峙すればいいのか想像もつかない。


ピアノの旋律が美しくループするなか、「ベイビー、俺が狂い始めたら、一刻も早く逃げてくれ」と歌う。どうしようもなく愚かで切実な男の姿に胸を締めつけられる。

あっという間の70分間。無我夢中で没入して、終演後の拍手でようやく我に返る。何度体験しても震えるようなカタストロフィー。

【次点】
Katy B『On A Mission』(2011)
Drake『Take Care』(2011)
Daft Punk『Random Access Memories』(2013)
Sky Ferreira『Night Time,My Time』(2013)
LUNA SEA『A WILL』(2013)
Thundercat『Drunk』(2017)

【総評】
女性シンガーソングライターばかり聴いていた00年代に比べて、10年代は性別も人種もごちゃまぜに摂取した印象があります。フジロック、サマーソニックという大型フェスに定期的に参加するようになったこと、CDというフォーマットではなく配信で音源を得るようになったことも大きな変化かな。

自分の人生においても24歳~33歳という10年はかなり濃密でしたが、「常に新しい音楽を聴いていたい」というマインドは変わらず。イヤホンをしていてもしていなくても、常に音楽に依っていたと思います(なのに、自分ではまったく弾けないし歌えないというおもしろさ)。

ひとつ言えるのは、私は音楽にリラックスしたい、癒されたいみたいな気持ちはいっさいなくて、常にぶん殴られたい。「うおおお」って衝撃を受けたい。
次の10年もそういう自分である気がしているけど、変わるなら変わるで楽しみ。どちらにしろ、2029年もまたこうやってお会いできることを祈りつつ。

@girliennes

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