【セレブリティ】キャプテン・マーベル ブリー・ラーソンが手にした“C”

マーベル・シネマティック・ユニバースの映画としては初となる、女性単独主演映画として話題を呼んだ『キャプテン・マーベル』。
5月に公開されるMCUシリーズの重要作となる『アベンジャーズ/エンドゲーム』にも満を持して出演するスーパーヒーロー(ヒロイン)である彼女。演じるのはオスカー女優のブリー・ラーソンです。

しかしこれだけの超大作の主演女優でありながら、「ブリー・ラーソンって誰?」「どこから出てきた人?」と思われる方もまだ多いのではないでしょうか。
『ルーム』でアカデミー主演女優賞を獲るまでは現地でも無名に近かった彼女ですが、じつは10代の頃「アヴリル・ラヴィーン風のガール・ロックを歌うも、まったく売れなかった」歌手時代があったことを知っている人はさらに少ないはず。

アルバム『Finally Out Of P.E.』


黒歴史? いいえ、とんでもない。当時の音楽活動にこそ、大スターとなった今もブリーがもち続けるインディー精神、反抗心、内省のルーツを見て取れるのです。

ここでは主にブリーの10代の音楽活動を振り返りながら、彼女がキャプテン・マーベルにふさわしい理由を考察していきましょう。

キャプテン・マーベルに主演するブリー・ラーソン。世間になじめなかった少女時代

ブリー・ラーソンは1989年10月1日生まれ、アメリカ・カリフォルニア出身。6歳にして女優になることを目指し、演技のスクールに通っていたそう。
2001年から放送されたドラマ『Raising Dad』のエミリー役で初のメインキャストを勝ち取りますが、1シーズンで打ちきりに。その後もアレクサ・ヴェガやサラ・パクストンといった若手女優らが共演した『Sleepover』や、ジェニファー・ガーナー主演のロマンティックコメディ『13ラブズ30』(名作!)に端役で出演したりするものの、パッとする活躍はできませんでした。

当時のことをブリーはこう語っています。
「私はわかりやすいタイプじゃなかったから、女優として不利でした。人気者の女の子役を演じるほどかわいくないし、内気な女の子役を演じるほどおとなしくもなくて、オーディションを受けてもハマる役がまったくなかった」

そんな彼女にチャンスが訪れます。女優業の一方、11歳からギターを弾き始め、自作曲をサイトにアップしたりしていたブリー。映画『ピーター・パン』のウェンディ役のオーディションに落ちたとき、その失意をもとに「Invisible Girl」という曲を作曲したところ、地元の有力ラジオ局であるKIIS-FMのエアプレイを獲得。
それがきっかけでマライア・キャリーの元夫である大物プロデューサー トミー・モトーラ率いるカサブランカ・レコーズとの契約を手にすることになりました(ちなみにレーベル・メイトは当時飛ぶ鳥を落とす勢いだったリンジー・ローハン)。


2005年、16歳でデビューアルバム『Finally Out Of P.E.』をリリース。
時流にのったキャッチーなポップ・ロックに、キュートでなめらかなボーカルが組み合わさった内容で、ガールロック人気が高かった日本でも一部で話題になりました(筆者自身も購入したひとりです)。
とはいえ音楽面ではこれといった特徴はなく、本人が当時フェイバリットにあげていたMaroon 5、Gwen Stefani、The Clash、Kanye Westあたりの影響などもほとんど感じられません。パッと聴いただけでは、ブリーが言うところの「わかりやすいタイプ」の音楽です。

『Finally Out Of P.E.』の真髄は、その世界観。学校や世間になじめず、オーディションにも受からない、そんなイケてない10代の女の子の気持ちが、赤裸々に描かれていること。
「ほかの若いポップスターにない、あなた独自の持ち味とは?」という質問にも、当時ブリーはこのように答えています。

「たぶん、ほかの人が歌っていない内容の曲を書いていることだと思います。私のレパートリーにはラブソングがあまりないんですが、本当に恋愛経験が少ないから。私はただ、自分が自分の人生を生き抜いているということを歌詞にしているんです」


シングルとなった「She Said」は、本人が書いてこそいませんが、「今はクソみたいな人生だけど、いつか語るべきストーリーを手に入れてやる」というポジティブなメッセージが込められた曲。


ミュージックビデオでは、ハンバーガーショップでの冴えないアルバイトにうんざりしているブリーが、嫌なお客にいたずらしたり、バックヤードでギターをかき鳴らしたりするというドラマ仕立ての内容で、演技力をいかんなく発揮。最後に見せる表情はさすがです。

ほか、「Loser In Me」「Ugly」など、タイトルを見ただけでも思春期のやるせなさを感じさせるようなものばかり。
上述の、オーディションに落ちた経験を描いた「Invisible Girl」では

I’m not no J-lo or Miss Spears(私はジェニファー・ロペスでもブリトニー・スピアーズでもない)
I’m just a girl who disappears(ただの目に映らない女の子)

と、実在のスターたちの名前を歌詞に盛りこんだりもしています(韻も踏んでる!)。

なかでも特筆すべきは、アルバム名にもなっている「Finally Out Of P.E.」。
「体育の授業からついに卒業」というユニークなタイトルは、体育教師に嫌われていて、居心地の悪い思いをしていた自身の経験からきたものだそう。

I, I play guitar(私はギターを弾ける)
But in your class(でも先生あなたの授業では)
That won’t get me far(そんなの全然意味がない)
Please, give me a “C”(お願い、C評価をください)
So that I can be(そうしたらやっと)
Finally out of P.E(体育の授業から卒業できる)

しかしこのアルバムはレーベルのプロモーション不足などもあり、セールス的には惨敗。音楽SNS・Myspaceなどで細々と活動を続けるも、2010年にはMyspaceにて、ファンに向けてはっきりと音楽業界への失望を伝えています。

「ずっと作曲してきたし、ずっと演奏してきたけど、そういったことに幻滅している自分に気づいた。ユニバーサル(カサブランカレコーズの親会社)に所属していることで、素晴らしい機会や出会いに恵まれた。そのひとつが、最高のファンのみんなたち。だけど私自身が楽しめなくなってしまった。私は全部自分で曲を書きたかったのに、会社はそれを恐れていた。私はスニーカーをはいて自分のギターを弾きたかったのに、会社は私には『ヒールをはいた、風になびく茶髪の女の子』でいてほしがった」

女優業も引き続きパッとせず、また長い下積み時代を送ることになったブリー。
とはいえ音楽への情熱が消えたわけではなく、女優として稼げなかった時期は、むしろDJが本業という時代も。

出世作『ショート・ターム』の撮影中ですら、生活費のため、週末にはDJの仕事をしていたとか。
お気に入りはビートルズのレアな外国語カバーや、イエイエガールズ、ソウル。アナログ盤しかかけないというこだわりの持ち主だったよう。


また、エドガー・ライト監督のコメディ映画『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』(2010)にも、歌手役として出演。歌も披露しています。

その後、ドラマ『ユナイテッド・ステイツ・オブ・タラ』や映画『21ジャンプストリート』などで徐々に頭角を現し、『ショート・ターム』でのケアマネージャーの演技で絶賛を受けブレイク。そして2016年には、『ルーム』でオスカーに輝いたのです。

今回、アクション超大作である『キャプテン・マーベル』の主役を演じるにあたり、9か月以上にわたって徹底的にトレーニングを積むことに。大部分のスタントも自分でこなしました。

メイキング映像では、ダンベルを持ち上げたり、ウエイトを身体に巻きつけて腕立て伏せをする姿が見てとれます。
「目的は、役を深く理解すること。キャラクターの骨組みからつくり上げたいと思ったんです」とインタビューで語っているブリー。「体育の授業からどうか卒業させて」と訴えていた時代を思うと、感慨深いものがあります。


その成果は、この凛々しすぎる背中を見れば明らか。

けしてゴージャスな美貌や抜群のスタイルをもつわけではないブリーが、キャプテン・マーベルを演じること。それ自体に、とても大きな意味があったのではないでしょうか。

そんなブリーは女優業以外にも熱心です。4月5日からNetflixで配信開始した『ユニコーン・ストア』で初めて長編映画を監督。
またフェミニストを公言し、日ごろから性暴力被害者への支援活動にも取り組んでいるほか、次の目標について「映画業界における、さまざまな職業について学ぶことができる職業訓練学校をつくること」と表明して話題を呼んでいます。

地位におぼれることなく日々鍛錬し、手に入れた大きな力を、世の中がよくなるために使う。そんな姿はまさに等身大のスーパーヒーローであり、人を導く真の強さがあります。

ブリーの才能を信じてくれなかったという体育教師も、もう認めざるをえないでしょう。彼女が背負う“C”の称号――Captainの称号は、与えられたものではなく、自ら勝ち取ったものなのです。

@girliennes

参考:
http://www.vulture.com/2015/11/remember-that-brie-larson-was-a-pop-star.html
http://people.com/awards/inside-oscar-winner-brie-larsons-pop-star-past/
https://www.kidzworld.com/article/5424-brie-larson-interview
https://www.rollingstone.com/music/music-news/flashback-listen-to-oscar-winner-brie-larsons-pop-star-past-238543/
https://www.instagram.com/p/BSUmmFzjXrK/

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