【Movie】【Book】私が好きな動物たちの物語

こんにちは、ズバリです。今年のアカデミー賞長編アニメーション賞を受賞したのは『ズートピア』でした。かわいいうさぎの警察官とクールな詐欺師のキツネのコンビをはじめとした魅力的なキャラクターに加え、草食動物と肉食動物の間にある偏見や差別を描いた、人間社会を反映したストーリーも印象的でした。一方、3月に公開された『SING/シング』も擬人化した動物たちが主人公になった作品。こちらは動物の種類にあまり意味をもたせなかった分、哺乳類も爬虫類も虫たちも皆スターになれるんだというポジディブなメッセージを発しています。今回は「私が好きな動物たちの物語」を紹介していきたいと思います。

■『マウス アウシュヴィッツを生きのびた父親の物語』
本作はアート・スピーゲルマンが自身の父親の収容所体験を漫画化したもの。タイトルのマウスはユダヤ人を指し、作中、ユダヤ人はネズミの顔で描かれています。一方、ポーランド人は豚、ナチスは猫と、民族/国民によって外見がはっきり区別された描写になっています。たとえば、普段はネズミの顔をした父親が生き延びるためにポーランド人のふりをする場面がありますが、ここでは豚のお面をかぶっています。非常に重いテーマでありながら、途中でやめることなく読ませてしまうのは、この擬人化された絵の面白さも一役買っているのかもしれません。
戦時下の父親はどんな時も絶望しない冷静さと知性と運を兼ね備えた人ですが、時折挿入される現代パートでの父親はユダヤ人のステレオタイプを体現したような人なのもペーソスを誘います。そんな父親の差別に対する考え方が描かれる場面では、差別された人が差別をしないわけではないことを突き付けられ、差別の根深さを感じずにはいられません。父親のことをヒーローではなく、一人の生還者として率直に描いたアート・スピーゲルマンにも度量の大きさを感じます。

■『くまのアーネストおじさんとセレスティーヌ』
ガブリエル・バンサンによる絵本をアニメーション化した本作は、観ると心が穏やかになる優しい作品です。アーネストはワンマンバンドを生業に一人で自由に暮らすクマ。どこか中年の悲哀とユーモアを感じさせる存在です。セレスティーヌは絵を描くことが好きな孤児のネズミの女の子でやや変わり者扱いされています。それぞれの世界で孤独を抱える2人が出会って、一緒に暮らしていく様子を描いています。
普段は分断されているクマとネズミの世界。お互いの存在を認識しながらも、クマは地上で、ネズミは地下で、交流することなく暮らしています。どちらの世界も擬人化されていますが、それぞれの特性を生かした街並みになっていて、少しズートピアにも似ています。
ストーリーもさることながら、とくに素晴らしいのは水彩画のような温かみのある絵。絵本の世界に入りこんだような気持になれる、ずっとそこに浸っていたくなるような映画です。躍動感のあるアクションシーンやアーネストとセレスティーヌの表情から、ジブリの影響も大きいのだろうなと思います。本作を観て、懐かしさを感じた大きな理由はそこにあるかもしれません。何だか忙しいなあというときに見直したくなります。

■『ひげよ、さらば』
異色の児童文学作家、上野瞭による本作は「野良猫 地獄の抗争」と言いたくなるような骨太な小説です。子ども向けに連載されていたそうですが、その内容はハードボイルドで、猫版仁義なき戦いのよう。表紙にある内容紹介には「野良猫たちのバラード」と表現されています。記憶をなくした主人公猫、ヨゴロウザは野良猫の片目と相棒になり、野良としての生き方を学んでいきます。片目の夢は野良猫たちを団結させて、冬になると襲撃に来るであろう野良犬軍団から身を守り、無事に春を迎えること。片目はヨゴロウザをリーダーに仕立て上げますが、野良猫たちはなかなか団結しなくて(猫だから)…というのがあらすじ。
約800ページにも渡るお話のなかには、気ままでだらしないけれど個性が際立つ野良猫ズ(歌ってばかりいる歌い猫、博識の学者猫、etc.)や凶悪と噂される野良犬軍団(タレミミ、ハリガネなど名前がいちいちかっこいい)、麻薬としてのマタタビ、哲学めいた会話といったかわいいだけじゃない犬猫たちの世界が広がっています。ヨゴロウザの過去には何があったのか、野良犬軍団との関係はどう展開していくのか、ヨゴロウザを利用しているようにもとれる片目の思惑とは何なのかなど、読みどころ満載です。
読了後の思えば遠くに来たものだという感じは、膨大なページ数から綴られる重厚なストーリーによるものだと思います。寺や神社にいる野良猫たちをこれまでと違う目で見てしまうとともに、すべての猫たちにエールを送りたくなります。

擬人化された動物たちの物語は、キャラクターの魅力が際立った作品が多い印象ですが、人間社会を色濃く反映していて、何でこの動物なのかを考えるのも一つの楽しみなのかなと、今回改めて思いました。NETFLIXで配信されている馬の俳優が主人公の『ボージャック・ホースマン』も面白そうですし、これからも物語の中の動物たちに注目していこうと思います。

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