【Movie】等身大ヒロインと大人の痛みの帰還 ――『ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期』

こんにちは、L@eryeryerynaです。

すっかり秋も深まり、1年も終わりに近づいていることに絶望を覚える今日この頃……。

今年スクリーンに帰ってきた大物と言えばやはり『シン・ゴジラ』のゴジラが記憶に新しいですが、この秋、英国が生んだあの伝説的ヒロインも劇場に帰還しますね。

太めで補正下着が欠かせず、酒びたりでヘビースモーカー、相当なドジ、そしてシングル。特別若くも、特別きれいでも、特別賢いわけでもないけれど前向きで、みすぼらしささえもチャーミングに変換させてしまう主人公……その名もブリジット・ジョーンズ!

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来る10/29(土)に公開されるのは、『ブリジット・ジョーンズの日記』(2001)、『ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12か月』(2005)に続くシリーズ3作目で、11年ぶりの新作となる『ブリジットジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期』。

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三部作の集大成となるこの作品を一足早く鑑賞してきたのですが、前作・前々作同様にロマンスはたっぷり、そして大人の女にまつわるリアルな問題が見え隠れするビターさは増し増しで帰ってきていました。

シリーズ1作目冒頭、レニー・ゼルウィガー演じるブリジットが新年をひとりで迎え、お酒を片手にパジャマ姿で「オールバイマイセルフ」を熱唱するシーンはあまりに有名。

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「今年こそ断酒してダイエットして、そして恋人を見つける!」と新年の誓いを日記に書き込む、共感しかない物語のスタートからはや15年……。ノートブックからiPadへと姿を変え、本作でも彼女は思いの丈を日記にぶつけることになります。

これまでに彼女とロマンスを繰り広げてきたのは、コリン・ファース演じる仏頂面カタブツ弁護士のマーク・ダーシーと、ヒュー・グラント演じるお色気チャラ男上司ダニエル・クリーヴァー。

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マーク大先生の恋愛名言の数々や、色男ダニエルの器用な女たらしっぷりにうっとりできる、「けんかをやめて、二人をとめて」な竹内まりや的三角関係(贅沢すぎる!)もシリーズの大きな魅力でした。

前作の『きれそうな私の12か月』で晴れてマークと「めでたしめでたし」のその先の「ハッピーエンド」を迎えたはずのブリジット。ところがどっこい、『ダメな私の最後のモテ期』の予告やチラシでマークが「元カレ」と表記されていることに、出川哲郎ばりの「WHY?」が出た人も少なくないのでは? 本作は、1作目の『ブリジット・ジョーンズの日記』から10年経った設定。ブリジットも32才から43才になり、30代から40代へと年齢を重ねる中で彼女を取り巻く環境は大幅に変化しています。

残念ながら我々が期待したようなハッピーエンドは維持されず、運命の人と結ばれたかと思われたブリジットは彼氏なしのシングルに逆戻り。再び「大人のひとりぼっち」と向き合うはめになっていたのでした。その結果、パジャマ姿で43歳のバースデーを1人さびしく迎えるデジャヴのようなブリジットの姿から始まるのが本作。

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恋人がいないのはともかくとして、彼女の誕生日にかけつけないとは、あの3人のやさぐれ系親友たちは一体どうしたのか?

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もちろん、友情は途切れず続いており、信頼関係で結ばれている様子もあの頃のまま。ブリジット以外の3人は結婚して子どもを持ったことで生活も物事の優先順位も変わり、以前のような付き合い方はできなくなっていたのでした。

こういう少し寂しい人間関係の変化、リアルに味わっている方も多いのでは? 健やかなるときも病めるときも連れ添ってきた友だちがいても(そして決してその大切さは変わっていなくても)、例えば結婚や出産という人生の大きなイベントを通して環境が変わってしまえば、ずっと一緒に人生の大事な局面をカバーしていくことは厳しい。悲しいことに、孤独は愉快な親友たちがいても避けられないんですよね。

1作目と本作の監督であるシャロン・マグワイアは、『ブリジット・ジョーンズの日記』がヒットした理由について「孤独が万国共通の恐怖で、誰もが一人ぼっちを恐れており、単なるコメディではなくブリジットの孤独への恐怖が描かれた部分に多くの女性が共感したから」と語っています。

三部作の最終章である本作は、シリーズを通して隣り合わせにあった孤独とのファイナルマッチで、「ひとりぼっち」を本質的な意味で脱却するための物語になっていると思います。(その脱却の仕方については個人的には少し残念に思うところもあるのですが……。)

旧友たちとの付き合い方が変わった今、ブリジットを慰めるのは30代でシングルの同僚たちとの気の置けない会話。実は前作からは職場にも変化があり、テレビ番組のリポーターとして人気を博していたブリジットですが、なんと本作ではニュース番組のプロデューサーに出世しています!

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大胆すぎるドジ癖こそ健在ですが、エルニーニョ現象も知らなかったあのブリジットが、政治問題について的確な取材指示を出す立派な姿にはびっくり…。ドジを踏もうがバカにされようが、続けて仕事と向き合ってきたのであろうこの10年という歳月は彼女を裏切らなかったということか、と勝手に少し胸が熱くなったりして。

それでも『SEX AND THE CITY』のキャリーやサマンサのように、イケイケの働くアラフォーとして憧れられる立場にならせてもらえないのがブリジット・ジョーンズ。年下の女が新しいボスとして現われ、ブリジットたちの作る番組を退屈だと一蹴。歳を重ねたことでようやくキャリアを掴んだのに、今度はフレッシュな感性を求められ「古臭い」と言い放たれる理不尽さの中で奮闘します。

ブリジットがプロデューサーを務める番組のキャスターであるミランダは、彼女のよき理解者。おカタい常識には縛られない奔放な性格で、放送中も音声が入らない瞬間をねらって、「このあいだ3Pした男は」などと性生活をオープンに語ってしまう大胆さが気持ちいいキャラクターです。

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そしてそのミランダにけしかけられたことをきっかけに、恋愛もご無沙汰だったブリジットは再び「けんかをやめて」な羨ましすぎる三角関係に取り込まれることに。

今回その三角関係にはおヒュー様(ダニエル)はある理由で参戦ならず……。代わりに出演しているのが、ドラマ『グレイズ・アナトミー』でもおなじみのパトリック・デンプシーです。

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パトリック・デンプシーと言えば、親友ラブコメの超名作『近距離恋愛』ではダニエルさながらの遊び人、『魔法にかけられて』ではマークさながらのカタブツ弁護士を演じて観客をもだえさせてきたときめき演技の匠。「ダニエルが出ないブリジット・ジョーンズの日記なんて!」というファンの不満を見事におさえる、ラブコメ好きにはたまらない文句なしの人選に拍手を送りたい!

彼が演じるのは、リッチでイケメン、しかも性格もよしという絶滅危惧種に登録すべき非の打ち所のない実業家・ジャック。ダニエルのような器用さやユーモアは持ち合わせながら意外にも硬派、そして何より今どきでロマンティックな行動力が魅力的です。私がこの作品の中で一番うっとりしたのはクライマックスでもなく、マークがらみのシーンでもなく、彼が中盤でくりだした反則テクニックでした。他の映画であれば、クライマックスでも使えただろうズルい名シーンなので、ラブコメ好きは請うご期待!

とはいえ、もちろん歳を重ねたマーク・ダーシーも変わらず素敵……。(巧みに愛を語るマーク節も健在!)前作までのマークvsダニエルとはまた違った「取られ合い」を楽しむことができます。

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そして、ブリジットのあの悩みごとにも変化が。太めの体重を気にしていた彼女ですが、なんとデカパン不要の理想の体重とスリムな体型を手に入れています。(彼女の魅力とはむっちりした体であり、私たちを勇気付ける体重ではなかったのか? と思うと少し寂しいですが……。)

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しかしながら、理想の体型をgetした代わりにハリと血色を失ったブリジットは、シワが目立って43歳という設定年齢よりも老けて見える上、レニーのお顔なおしもあって顔認証エラーが出そうな変わりっぷり。そんな彼女の風貌にショックを受けたのも事実です。

シリーズを通して、マークはブリジットに「ありのままの君が好きだ」「君が太めでもヒステリーでも大切にするよ」と、彼女の不完全さもひっくるめて受け入れるというメッセージを送り続けていました。そして私たちも彼女の不完全でダメな部分が好きだったはず。本作が始まってすぐつきつけられたのは、今現在の「ありのままのブリジット」をはたして愛せるのか? という課題でした。

『ブリジット・ジョーンズの日記』は、自分と他者の不完全さを許し、認めていく物語だったように思います。また、スクリーンの中の不完全な彼女を愛することで、私たちは自分自身の抱える不完全さ(彼女と同じく太めだとかシングルだとか、あるいは仕事ができないとか)を許せたこともあったかもしれません。整形はともかく加齢による変化もまた私たちにとっても無関係なものではなく、遅かれ早かれ受け入れていかなくてはならない問題。製作側としては全く意図していないところでしょうが、予想外なブリジットの老けっぷりから、彼女の(そして自分の)「変化も込みのありのまま」を受け入れることについて改めて考えさせられたのでした……。

レニーは「生きていく中で思い描いていたのとは違う場所にたどりついてしまうことがある。ブリジットの物語のこの章が描くのは“思い描いていた人生VS自分自身の今の姿”なの」と語っています。40代の仕事、恋愛、友情といったテーマにシングルの孤独、出産へのタイムリミットなどへの不安や恐怖を内包させながら、大笑いできるコメディに仕立てられた『ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期』。いつか理想とは違う人生にたどり着いてしまったとき、やはりそれを許し、認め、喜劇へと転換する目線をくれる、大人のための愛すべき作品でした。

(@eryeryeryna)

公式サイト:http://bridget-jones.jp/

 

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