【Book】【Music】【Art】『GIRL IN A BAND』〜キム・ゴードンと振り返る「バンドの女の子」と アメリカン・ポップカルチャーの30 年

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こんにちは、Chiaです。 今回は邦訳が発売されたばかりの、キム・ゴードンの自伝『GIRL IN A BAND』をご紹介します。 2015-07-13 16.18.48
『GIRL IN A BAND』は、1981 年から2011 年まで活動していたアメリカのバンド、Sonic Youth の女性メンバーであるキム・ゴードンが書いた自伝である。X-girl の設立メンバーの一人であり、ソフィア・コッポラやクロエ・セヴィニーらと共にガーリー・カルチャーの立役者の一人として、バンド活動の枠に留まらないアート方面での活躍を覚えている方も多いと思う。 本書は自身の生い立ちを含めバンドの30 年の歴史を振り返る 内容で、今までSonic Youth のメンバーによる自伝が出版されていないこともあって、ファンにとっては待望の一冊だった。けれど周知の通り、フロントマン/キムの夫であったサーストン・ムーアとの離婚によって、バンドは既に解散している。つまり、この自伝はキムによるSonic Youth の歴史の幕引きという一面も担っていることになる。
キム・ゴードンは、この本で私が今まで知らなかった一面を覗かせる。大学教授の父親と専業主婦の母親、幼い頃に父親の仕事で移り住んだハワイと香港での生活、60 年代後半の南カリフォルニアの憂鬱、「暗黒期」と呼ぶ高校時代、崇拝していた兄(後に統合失調症だと診断される)との関係、カナダでの大学生活、家族とLA を離れてたどり着いたNY。 振り返った時に「自分が誰なのか本当には気づいていなかった」(P59)というが、キムは自分がどうありたいのか、常に理想を描きながら進んでいたように感じる。独立心が高く、将来アーティストになれると信じてやまなかった女の子。そんな彼女が、NY 時代に「バンドの女の子」になったのは時代や環境が大きく関わっている。80 年代マンハッタンでのアートシーン、ノーウェイブ音楽、そして次第に広がっていく人脈の中でのサーストン・ムーアとの出会い。

2015-07-13 16.18.52バンドの女の子。キム・ゴードンほどそのイメージを強く印象づける人物も珍しいと思う。メンバーの脱退、バンドの活動停止、解散など、移り変わりが激しいロックの世界では、女性が一時的な補佐役ではなく、何十年もの間に渡って同じバンドに在籍すること自体が貴重だ。 さらに、SonicYouth というバンドーーー(本文からジャーナリストの言葉を借りれば)、「クールでハードコア、自分たちのアートに真剣で、セルアウトしてないし、ソフトにもなってない」(P7)ようなエクスペリメンタル・ロックをやっている人たちの中に、女性が一人いるというのは否応無しに目を引くようで、キムもバンド内における自身の性別的な立場についてよく質問を受けていたという。それは後に年齢差別的・性差別的な記事にまとめられていた、とも。 学生時代、キムが惹かれたアートのシーンでは、「野蛮さ、ギリギリの線までいくことは男性的」であり、「文化的に、女性が自らが望むだけ自由に振るまうことは許されていない。なぜなら、怖いから」(P127)といった暗黙の了解があったそうだ。後に彼女がNY の音楽シーンの「純然たる自由と強烈さ」(P101)に導かれるようにして飛び込んでいくことになった経緯は、Sonic Youth の音楽性とも深く結びついていて、とても興味深い。

アートと音楽との融合。私がSonic Youth というバンドを好きになったのも、キムの存在によって、性別にとらわれない表現の自由さを垣間見ることが出来たからなのかもしれない。 「男たちは音楽を演奏する。私は音楽を愛した。それがなんであろうと、男たちが一緒にステージにいるときに彼らが感じているものに迫りたかった(中略)ここに私がバンドに参加した理由がある。そうすれば、この男の力学の内側に入り込んで、閉じられた窓から中を覗き込むのではなく、外を見ることが出来るのだ」(P103) バンドを初めた当初は、わざと髪をまだらに染めたり、パンクロック的なファッションを取り入れて、西海岸のミドルクラス的な見た目や女らしさを潰そうとしていたという。

X-girlのプロモーション画像より

X-girlのプロモーション画像より

そんなキムが94 年に立ち上げたX-girl のデザインが西海岸的なイメージを持ち、身体にフィットするデザインであったことは、彼女の変化を反映したものであった。 「90 年代初頭、私はゆっくりと新しい考えかたを受け入れるようになった。すなわち、もっとセクシーな服を着れば、聴きづらい音楽をもっとかんたんに売ることができる」(P165) 聴きづらい音楽、確かにSonic Youth の音楽はギターのノイズ、それにかぶさる歌声、特殊なチューニング、詩の朗読など実験的な手法を取り入れている。だが、ここまで多くのファンに受け入れられるようになった背景には、同時代のアーティストたちとの繋がりによって、自然な形で自らのプロモーションを行ってきたという点が挙げられるだろう。

ソフィア・コッポラと

ソフィア・コッポラと

ざっと振り返るだけでも、ジャケットに使用されたゲルハルト・リヒターやレイモンド・ペティボンといったアーティストや、プロモーションビデオを監督したトッド・ヘインズ、スパイク・ジョーンズ、ハーモニー・コリン、出演したクロエ・セヴィニー、X-Girl 立ち上がりを支えたマーク・ジェイコブス、ソフィア・コッポラ、マイク・ミルズ、そしてもちろんNeil Young、Nirvana、Pixies、Dinosaur Jr. 、Beastie Boys、Pavement といったバンドのメンバーたちが本書に登場する。(ちなみにこの辺りはファンにはたまらない描写がある!) Sonic Youth が駆け抜けた30 年は常にアートと共にあった。そしてそれが、西海岸を飛び出した女の子が自由な世界と繋がろうと試行錯誤した結果であったとすれば、とても夢のある話だと思うのだ。 最後に一つだけ。本書に書かれているバンドの結末ー、つまりキムとサーストンの不和やサーストンの浮気、離婚といった話にはここでは言及しない。あまりにプライベートで、バンドと混合して語られるのは理不尽だと思うのだ。ただ、Sonic Youth の音楽がどうして耳障りなのかについて尋ねられたサーストンとキムがいつも答えていたという言葉を借りれば、「音楽は現実的にして動的、なぜなら人生はそういうものであって、極端さに満ちているから」(P91)ということなのかもしれない。 (Chia)

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