【Movie】カウントスリーで花火をあげて/『なんちゃって家族』

were-the-millers-1こんばんは、@vertigonoteです。真夏がはじまる少し手前のこの時期は、例年なかなか天気が安定せず、気持ちもクサクサしがち……そんなときにはやはり超ゴキゲンなアメリカン・コメディで楽しみません?

なんちゃって家族というわけで今日は今月ソフトリリースとなった『なんちゃって家族』をご案内。これは本当に“気持ちのいい”という表現がぴったりくる映画でした。
いい年して大学時代からずっとぼんやりやってきた大麻ディーラーを続けているデヴィッドはある日トラブルに巻き込まれて街の不良にマリファナと売上金を奪われてしまい、ボスからお目こぼしと引き換えにメキシコからブツを運び入れる羽目に。しかし一人で国境越えは怪しまれるからと、家族旅行を装うことにして近所のボンクラ童貞少年ケニー、ホームレス娘ケイシー、そして同じマンションに住むストリッパーのローズを仲間に引き込むのです。それぞれに違う方向に「人生詰んでます」な4人衆は「善きファミリー」に扮して、いざメキシコへ!ということでしっちゃかめっちゃかな、でも何か居心地のいい偽家族の旅が始まる……

というお話なのですが、もうこれが3分に1回は感情を揺らすイベント(7割は笑いだけど3割は苦味や甘味も入ってる)を設けて物語を停滞させず、振ったネタは律儀に回収してまわる脚本とチャーミングなキャストが揃えばここまで楽しい映画ができる、という証明のような作品。

『ウエディング・クラッシャーズ』組+『オフロでGO!!!!! タイムマシンはジェット式』組による脚本に『ドッジボール』の監督でセオドア・シャピロの音楽、主演カップルがジェイソン・サダイキスとジェニファー・アニストンという段階でどういう映画であるかということは(特定のジャンルファン層には)保証つきといえるレベルだと思うのですが、何しろステーションワゴンでGO!メキシコへGO!にボーイ・ミーツ・ガールの複数形を絡ませて疑似家族を完成させ、バカバカしくも素敵な打ち上げ花火着地をキメるのがあまりにも鮮やかで、ラストは劇場で拍手したくなってしまいましたよ!millers

どうするんですかこれ、という話をどうにかしてしまう力技の脚本、ロードムービーのなかで関係が変わっていく4人のキャラクター造型とその変化のつけ方は、もはやアメリカン・コメディの伝統(かつ進化し続ける)職人芸の領域。ろくでもない人がろくでもないなりにあれこれ頑張る可笑しみの緩急も、奇妙なファミリーとの遭遇による変なツイストのかけかた、ろくでもなさは保ちつつ「幸せ」としかいいようがないラストに収拾してしまうリアリティのラインの切り方も、解決に向かう道筋で少しずつ変わっていくのは君だけでも俺だけでもなくというバランスの取り方も、気が利いた音楽使いもイチイチ好ましいのです。だいたい90年代ゾンビ的にはあの車中のWaterfallsでもう傑作認定せざるを得ないですし……。

なんかズーランダーみたいになってますが素敵なんですよ

なんかズーランダーみたいになってますが素敵なんですよ

ロマンティック・コメディ好きとしてはやはり主人公をこれだけクズとして描きながらもキャラクターの奥にかなわずすれ違った思いの甘酸っぱさを秘めさせたのが成功のもとではないかと思うのです。ボンクラ中年ロマンスパートにおけるジェイソン・サダイキスとジェニファー・アニストンとのケミストリーが最高で、ちゃんとお互いの「お前なんか!お前なんか!大好きだ!」が浮かび上がってくるのが嬉しいところ。

それにしてもジェニファー・アニストンのジェニファー・アニストンぶりったら!彼女はこういうしゃっきりしない男と渡り合うヒロインが本当に似合うのです。くすんだ肌が何か妙につっぱってペカペカしてるのも、グッド・ハウスキーピングに紹介されてそうなグッドワイフ風ノースリーブシャツからにょっきり突き出す二の腕のたくましさも実に素敵。キスの指南に、無言の怒鳴りあい、敵前ストリップと見せ場ごとに輝きまくり。何しろあのオマケシーン!最高!彼女は本当にコメディエンヌとしてトップに君臨し続けてる人であり(日本での劇場公開作が少なすぎるので忘れられがちな気もしますが・・・)スタッフやキャストからのハンパない敬愛を感じました。

この白目力の高さ、まがった唇の不機嫌感!

この白目力の高さ、まがった唇の不機嫌感!

ホームレス少女ケイシーを演じたエマ・ロバーツの「一人称:ウチ」感も例によって最高でした。すぐに「やってらんない」顔して中指立てる種類の女の子女の子をやらせたら天下一品、『愛しのアクアマリン』の頃から生意気少女が似合ってたエマは今や最も“ゴールデン・ハートのビッチ”が似合う女優ではないでしょうか。何かと白目を剥いて「ハァ?」と大人をバカにした顔をして、どんなときでもスマホから手を離さず、それでいて『セレステ&ジェシー』で「大人になっても恋はつらいの?」と無防備に呟いてセレステを呪縛から解き放ったのと同様に、ティーンらしい純情を見せるシーンが最高に似合う素敵な女の子なのです。予想外の事態に他のひとたちが茫然としている前で一人で体勢立て直して機転をきかせるところや弟もどきのケニーの恋を見かねて話しかけてしまうぶっきらぼう、妙に侠気を感じるあの目の強さは素晴らしい個性。この映画を見て彼女のことが一層好きになりました。

舞台になっているのが独立記念日周辺の日時なので、この映画のなかでは“花火”が重要なモチーフになっています。あとに残る芸術ではないかもしれないけれど、飲みながら大きな打ち上げ花火がたくさん見られるお祭りは他では得難い夏の夜のお楽しみ。この映画の楽しさにはまさにそういう「花火大会」の感覚の楽しさがあると思うのですよね。だからこそ、できれば劇場でいろんな人と一緒に楽しみたいものですが、(やはりこういう映画はなるべく見逃さないように、そしてこれからも公開されるように、劇場に通わなくては……!と決意を新たにした1作でした)ビデオグラムでもその楽しさは十分伝わるはず。「何か1本軽くて楽しい映画を見て気分良くなりたい」ときにはちょっと試してみるといい映画だと思います。 (@vertigonote)

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