【Movie】もの書くむすめと映画少年/『ウォルト・ディズニーの約束』

disney
こんばんは、@vertigonoteです。

『アナと雪の女王』(早く見に行かなくちゃ!)が大ヒット、Let it goが大人気を集めている今週、もう1本、魅力的なディズニー映画が公開されます。

Winds in the east, mist coming in.
Like somethin’ is brewin’ and bout to begin.
Can’t put me finger on what lies in store,
But I fear what’s to happen all happened before…

そう、ミュージカル映画『メリー・ポピンズ』の製作秘話を描いた『ウォルト・ディズニーの約束』

Mary-Poppins-cast-mary-poppins-16366922-720-540東風に乗ってやってくるメリー・ポピンズの物語の有名な冒頭の台詞。この作品もおなじ「物語の始まり」を告げる台詞で幕が開きます。邦題には「ディズニー」が冠されているのですが、そのクリエイティヴにまつわるすったもんだそのものというよりも、間に挟み込まれた回想で明かされていく「父の娘」としての過去の呪縛を受け続けているひとりの偏屈な女性作家、原作者であるP.L.トラヴァースの物語にフォーカスされていて、そこがとても好ましい映画でした。きれいなアメリカ映画好きとしてはどうしたって、こういう折り目正しく丁寧に、かつ抒情的に描かれた、優しい嘘の物語には頬が緩んでしまうのです。

この物語に私が魅せられたのは、ひとことでいうと“もの書くむすめ、その後”のストーリーとして胸が熱くなったから、だといえるでしょう。多くの少女小説の主人公たちがそうであり、書き手そのものでもある「もの書くむすめ」。彼女たちは、『女子と作文』について熱く語ったとおり、私が最も愛する存在(だって私もそうだから!)。この映画におけるP.L.トラヴァースもおそらく、そんな存在。慣れない新天地で苦労するなかで弱っていった、夢見がちな少年のような父と世間知らずな少女のような母を目撃し、傷ついてきたかつての「ものかくむすめ」が、作家になって描いた『メリー・ポピンズ」に秘められた想いが、色々な確執を越えて、夢の王国をつくったとんでもない人ディズニーとその仲間たちによる映画づくりをめぐって呼び起こされていく――鮮やかな陽光のもと、いつしか大嫌いなはずの巨大なぬいぐるみを抱きしめ、「凧をあげよう」に靴はワルツのステップを刻み始め、彼女にとっての“メリー・ポピンズ”が明かされていく――定石なのに涙が滲んでしまうような瞬間がたくさんある素敵な映画です。出てくるひとたちもみんな魅力的。

物語の「良心」を最も深く担ったのがポール・ジアマッティ演じる運転手さん。 彼が語る素朴な言葉、天気の話が物語のテーマにつながっているのも嬉しいところ。

物語の「良心」を最も深く担ったのがポール・ジアマッティ演じる運転手さん。
彼が語る素朴な言葉、天気の話が物語のテーマにつながっているのも嬉しいところ。

saving-mr-banks05

私のお気に入りはジェイソン・シュワルツマンとB・J・ノヴァクのシャーマン兄弟!
名曲の数々を歌いまくってくれるのが最高に楽しい!

SAVING MR. BANKS
そして何より良かったのがコリン・ファレルでした!回想のなかの「父」なのですが、ああいう役をやっているのを見たのは初めてで(でもちょっとだけ『セブン・サイコパス』にもつながっていたりはする)、なんだかとても新鮮。彼女を「お姫様」にしてくれた、想像力の翼を与えてくれた、彼女にとって最初で最後の憧れの男性としての父親。あんなにセクシーで、優しくて、悲しくて、傷ついた父親の失意を見せられたら、幸せな時間のぶん「父の娘」の呪縛は深くなるよね、という説得力抜群。

フィクションの中の少女たちには「もの書くむすめ」がよく出てきますが、一方、映画の中の男の子には実に「映画少年」が多い。この二つは対になるのではないでしょうか。そして、時にそんな二人が手を組めば、無敵になることもあるのかもしれません(大惨事になることも多そうですが!)。ふたつの異なる才能、トラヴァース夫人とウォルト・ディズニーがまさにそうだったように。トラヴァース夫人はすぐに嘲笑めいた溜息をつき、全然他人の話をきかない、あらゆることにNO!を突き付ける意地っ張り。どんなに嫌がられようとファーストネームで呼びあうことを強制し、意地でも映画化してやろうとするディズニーのテンションの異常な高さ。ふたりは全くかみ合わない、立場の違う、そっくりさん。ふたりとも、何かが欠けてしまった子どものままでいる存在。だからこそ「夢」を描けた存在。

音楽や美術、衣装にいたるまで、こまやかに気が配られた色彩がとても綺麗で、改めて『メリー・ポピンズ』という作品の美しさに気づけたのも嬉しかったですね。

なんたってメリー・ポピンズはいまだ現役ファッションアイコンですからして!

メリーとバートのコスチューム!「メリー」の方がちょっと只者ではない雰囲気だな?と思ったら、このケイコ・リン嬢、とびきりかっこいいファッション・ブロガーなのでした。


ちっちゃな頃のエル・ファニングもメリー・ポピンズ・コスプレ!妖精…!

ちっちゃな頃のエル・ファニングもメリー・ポピンズ・コスプレ!妖精…!

ウォルト・ディズニーの約束あなたが映画の『メリー・ポピンズ』好きなら(どちらかというと原作以上に映画が好きならば、特に)楽しめること必至(『ヒューゴの不思議な発明』がメリエスの『月世界旅行』を見ている人にはより楽しめたように!)、未見の方ならばこの作品を見たあとで噛みしめるようにミュージカルシーンの出来栄えを確認したくなるはず。原作とあわせて予習(or復習)しておくと、きっとあの曲やあの曲の誕生シーンに楽しみ倍増ですよ。オマージュになっているシーンもしっかりあるし、“SAVING MR.BANKS”というタイトルにも一層ぐっとくるはず。このポスターも大好きです。「影」の部分の大きさに、胸がいっぱいになる。

実は私は中学生の頃に映画のメリー・ポピンズが好きで原作を読んだことがあって、そのとき驚くほど原作のほうが皮肉っぽくリアリスティックに思えてしまったんですね。そういう意味でも、なぜ映画でああならなくてはならなかったのか、という部分が気になっていたのですが、この映画はひとつのその回答としての「どうせつくなら美しい嘘を」の設計がとても好き。作り手たちの愛に胸が熱くなってしまいました。一方で物語の構成上「原作では完成してなかった」ようにも感じられてしまうので、原作>映画の人にはひっかかる可能性があるかもしれないけれど――それでも、そのことも実話を基にした映画という「フィクション」である以上、素敵なことだと思ったのです。「感じたこと」から「創る」者たちの矜持とせつないほどの思い入れ。私はフィクションが人を救う話に本当に弱いのです!

今週末3/21(金)~、全国で公開です。Let’s Go Fly A Kite!(@vertigonote)

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