【Art】女王陛下万歳!~秋の英国美術展スペシャル~

Midsummerアルバート・ムーア《真夏》1887年

日曜日に、横浜洋館めぐりをしました。学芸員の友人に歴史博物館(旧横浜正金銀行本店)を案内してもらい、そこで紹介されていた県庁(キングの塔)や税関(クイーンの塔)、開港記念会館(ジャックの塔)を眺め、山下公園の向かいにあるホテルニューグランドまで歩いてアフターヌーンティ。やっぱり旅には、乙女のインテリ欲とおいしいお茶が欠かせません。

3つの塔の名は、外国人船乗りたちがチェスの駒になぞらえて名づけたのだそう。大好きな英国趣味満載で、気分はたちまちヴィクトリアン。今回はこれに便乗して、秋からはじまる英国美術の展覧会をおさらいしてみました。

■ウィリアム・モリス展

itigo-1《いちご泥棒》1883年

19世紀の英国美術が乙女に刺さるのって、ひとつはアートとライフスタイルが意識的に接近して、現代の「インテリア」とか「デザイン家電」とかのファンシー感に近づいたことがあると思うんです。言うまでもなく、その代表格がウィリアム・モリス(1834-1896)。19世紀のイギリスを代表する詩人、思想家にして工芸家。植物や動物など自然界のモィーフと幾何学的パターンを融合したデザインが有名です。今回の展覧会では、「生活の中の美、手仕事の中の創造性」を求めたモリスの作品世界が紹介されるそう。

会期: 2003年9月14日(土)~12月1日(日)
会場: 府中市美術館
http://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/goriyo/h25nenkan_schedule/

■ターナー展turner《ヴェネツィア、月の出》1840年

フランス印象派にも影響を与えた、英国最高の画家と称されるウィリアム・ターナー(1775-1851)の大回顧展。私は正直ピンとこないのですが、ファンは多いのでしょう。
おもしろいとおもったのが、ターナーの野心家ぶり。彼が「巨匠」となった要因のひとつは、まず画題の選び方だというのです。新しいレジャーとしての旅行が流行していた英国で、10代のターナーはまず各地の名所の絵を描いて身を立てていく。戦争中だった20代には、海軍の活躍などを描いてアカデミーの正会員に選出。多くの画家の作品がひしめく展覧会では誰よりも良い場所を確保し、隣のライバルの作品の出来が良ければその場で自作を手直ししたそうです。
こういうエピソードまで発見できるのは回顧展ならでは。帝国ホテルのラウンジや英国王室御用達の紅茶「テイラーズ・オブ・ハロゲイト」、画家のファンだった夏目漱石の小説などとがっちりタッグを組んでいるかんじも頼もしい。

会期: 2013年10月8日(火)~12月18日(水)
会場: 東京都美術館
http://www.turner2013-14.jp/

■ラファエル前派展――英国ヴィクトリア朝絵画の夢

tateジョン・エヴァレット・ミレイ 《オフィーリア》 1851-52年

1848年、イタリア・ルネサンスを模範とする保守的なアカデミズムに反旗を翻した若い芸術家たちが、「ラファエロ以前」の芸術に立ち返るべく立ち上がった――みんな大好きラファエル前派兄弟団(P.R.B.)、念願の来日です!!
ミレイにハント、ロセッティ。世界的なコレクションを誇るテート美術館所蔵のラファエル前派の名画71点がまとめて見られる、話題の国際巡回展(テート美術館→ワシントン・ナショナル・ギャラリー→モスクワ・プーシキン美術館)。ラファエル前派の大規模展は英国においてすら20年以上ぶりで、世界中で大きな話題を集めていました。
先日、80年代や90年代の東京を生き抜いたさる大御所お姉さまに「いまさらラファエル前派だなんて(クス)」と笑われてしまった私ですが、私たちの世代には初なので楽しみです、と声を大きくして言いたい。
男たちの連帯と確執。運命の女。聖書や神話のロマンティックな画題。
いつの時代の乙女も心待ちにしてしまう、それがP.R.B.。
ほれ込んだきっかけのロセッティの《受胎告知》も来てくれるので、私自身、いまからドキドキしています。
tate3

ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ 《見よ、我は主のはしためなり(受胎告知)》1849-50年

会期: 2014年1月25日(土)~4月6日(日)
会場: 森アーツセンターギャラリー
http://prb2014.jp/

■ザ・ビューティフル――英国の唯美主義 1860‐1900
dreamers

アルバート・ムーア 《夢見る人々》1850-82年

噂をきいたのは、今年の春でした。美少年と連れ立った某広告代理店のおじさまがうれしそうに言うのです。「オスカー・ワイルドって好きかい? 彼がつくったみたいな展覧会をやるんだよ」――もう、大好きに決まっているじゃありませんか!
19世紀半ばのロンドン。産業革命後の物質至上主義のなかで、「芸術はただ美しくあるために存在すべきである」という信念のもとアートやデザインを生み出した芸術至上主義と、デカダンスの世紀末芸術を集めた展覧会です。まさに「あらゆる芸術は音楽の状態に憧れる」の世界。
salomeオーブリー・ビアズリー《クライマックス》1894年

テート美術館に続き、こちらはヴィクトリア・アンド・アルバート博物館の所蔵品がメイン。作品の知名度ではテートとP.R.B.にリードを許しますが、こちらは企画自体がダンディなので、胸が高鳴ります。
なにより、英国人ジョサイア・コンドルが設計した三菱一号館(1894年竣工)という会場がまさに、唯美主義最盛期に流行したクィーン・アン様式。建物に足を踏み入れたそのときから、そこは英国世紀末なのです。

会期: 2014年1月30日(木)~5月6日(火・祝)
会場: 三菱一号館美術館
http://mimt.jp/

そのほか東京ステーションギャラリーでも、「プライベート・ユートピア ここだけの場所」という現代美術展があるもよう(1/14~)。この、英国美術展の豊饒は、いったいどういうことなのでしょう。ただただ、感謝するのみです。
ありがとう女王陛下。ありがとうブリティッシュ・カウンシル。もしかしたらSHERLOCKのおかげかもしれないので、ありがとうベネディクト・カンバーバッチ!(高野麻衣 @otome_classic

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