【Movie】愛すべきダサいフランス/『タイピスト!』

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こんにちは、高野麻衣です。

「Aimer 君だけを Aimer 愛している」。先週から、鼻歌が止まりません。念願だった宝塚歌劇団星組のミュージカル『ロミオとジュリエット(Romeo et Juliette)』を観劇したからです!

誰もが知る戯曲を、隠れたミュージカル大国フランスがサスペンスフルにこってり味付け。おまけに現代日本最高の芸達者タカラジェンヌたち(しかも星組♡)が演ずるとなれば、よくないはずがない。映画で演劇でバレエで、何度も観ている悲恋物語なのに、号泣して立ち上がれなくなくなったのははじめての体験でした。

こういうことがあるから私は、音楽の魔力にひれ伏したくなるのです。もう、ミュージカルって最高!

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それにしても、今年2月の「ロックオペラ モーツァルト(L’opera rock Mozart)」につづき、またしてもフランスのミュージカルに夢中です。いったい、なににこんなにハマるんだろうと考えてみると、思い当たるのってそのエモーショナルさしかない。

作品としては英国人が書いた原作やその舞台、あるいはゼッフィレッリやバズ・ラーマン、アンソニー・ミンゲラなどの映画のほうが上だとわかるんです。ただ、フランスのミュージカルのエモはずるい。

原作には描かれないキャラクターの深層心理をむきだしにしたり(多くの場合「死」や「愛」のダンスとして視覚的に舞台に登場する)、考えてみればそうだよね、というような隠れた愛憎関係をきっちり描いていく。『ロミジュリ』なら、「ああ、ティボルトが逆上してマキューシオを殺しちゃうのって、ひそかに愛してきた従妹ジュリエットをモンタギューに奪われたからなんだ!」とか、『モーツァルト』なら、「初恋の女の妹を妻にするってことは、こういうキャットファイトもあったかもね」とか。

はっきりいって昼メロか、二次創作の世界。そういう、少女マンガだったらモノローグ満載のシーンを、これまた奇をてらわないけど中毒性のある王道ミュージカル・ナンバーで盛り上げていく……これは、エモくならずにいられません!

ね、これがフランス!?でしょう。私はこのフランスの、驚くべきベタさやダサさが大好きです。

これに気付いたのは、やはり音楽がきっかけでした。2007年に、ラ・フォル・ジュルネ音楽祭の一環としてナント市でバンド・コンテストみたいなことをやったんですが、かの地のティーンが繰り出してくる曲が90年代初期の下北沢(※イメージ)みたいでびっくりしたのです。いくら高校生でも、日本ならもうすこしとんがってるはず。これには驚きました。

上の世代にとって、フランスってまず「おしゃれの最先端」なんだとおもうのです。「知的」とか「エスプリ」とかの世界。だからあの女優もあの作家も「パリ在住」を売りにするけれど、もはや、かなり大時代的な感覚ですよね。

たとえばフランス人はアメリカぎらいってよく聞かされてきたけれど、それってヌーヴェルヴァーグの人とかの皮肉から出た迷信なんじゃないかな、ある意味アメリカにいちばん憧れているのが「素顔のフランス」なんじゃないかな、と思ったりもするのです。

歴史的にみても、グランドオペラと呼ばれるいまのミュージカルみたいなスペクタクルを流行させたのはパリだし、50年代のジャズ、60年代のイエイエ(シルヴィ・ヴァルタンの「あなたのとりこ」とか)を一大ムーヴメントにした前科がある。ヴァネッサ・パラディが恋人レニー・クラヴィッツの楽曲でたどたどしい英語を披露していたのも、懐かしい思い出です。

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自国が誇ってきた「おしゃれの最先端」の虚栄を無意識に察知した若い世代のフランス人たちは、フランスの愛すべきダサさや屈折したアメリカ愛(しかも両想い)をてらいなく見せることで、逆説的にフランスのイメージを保存しようとしているかのよう。最もわかりやすいのは、映画です。

かつてフランス映画といえば哲学的な会話満載で、陰鬱で、おしゃれだけど近寄りがたい雰囲気でした。俺たちこそが知性、と全身で語っていました。しかし、いまは違います。

たとえばこの夏、東京のフランス映画祭2013で観客賞を獲った『タイピスト!』(8/17公開)。

スタイリッシュな50年代のフランス。Aラインのドレスを纏い、どんどん垢ぬけていくオードリーのような主演女優。往年の少女マンガ展開を1ミリも裏切らない完璧なロマンティック・コメディ。まさに薔薇色のお仕事映画でした。

もちろん最後に勝つのは愛。理由は「フランス人だから」。まるでフランスに憧れるアメリカ映画のパロディです。こうした物語を軽やかにやってのける最近のフランス映画を観ていると、フランスがもっと好きになります。

なんやかんやで憧れの国に飄々としたユーモアが加わったら、それって最強ですもの。

 

http://typist.gaga.ne.jp/

(高野麻衣@otome_classic)

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