【ART】怖い女は欲望する/弥生美術館「魔性の女 挿絵展」

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皆さんこんばんは。@vertigonoteです。
文学フリマ、また通販等で花園magazine vol.2をご購入いただいた皆さん、本当にありがとうございます。今回の女優特集では、私は「女子から女子への憧れ」をテーマのひとつと考えて担当記事を書いています(「彼女たちの女優文学」「ロマンシスはいかが?」等)。「女優」という切り口から、それぞれの書き手が色々な視点で熱く語った1冊、引き続き通販購入も可能ですので、ご興味ありましたら是非お問い合わせくださいませ!

さて花園magazineの暗黒乙女部門担当であるところの私、先日弥生美術館にてプチ暗黒乙女団会議を執り行ってなかなか楽しかったので本日はそのご案内を。
http://www.yayoi-yumeji-museum.jp/
http://yayoi-yumeji-museum.blogzine.jp/
mashou
現在こちらの美術館では「魔性の女 挿絵展」が行われています。ホームページから、その内容を引用してみましょう。

明治末から、大正、昭和初期にかけて日本の文学に登場した「魔性(ましょう)の女」を、当時のイラストレーションによって紹介します。
泉鏡花「高野聖」の女、谷崎潤一郎「痴人の愛」のナオミ、江戸川乱歩「黒蜥蜴」(くろとかげ)の緑川夫人など、官能的な魅力によって男性を支配し、ついには破滅させる、あるいは美の追求のためなら殺人をも厭(いと)わないという「怖い魅力」を秘めたヒロインに、我々は強く惹きつけられます。時には、優しく善良なヒロインよりも強烈な魅力を感じさせられることもあるでしょう。
現在では目にする機会の少ない、彼女たちの当時の絵姿を、ストーリーとともに紹介し、耽美・幻想の文学世界を楽しんでいただきます。

ふふふ、どうですか!暗黒乙女的に逃せませんでしょ?

■弥生美術館はもともと好きな美術館なのですが、今回改めて東京屈指の日本耽美スポットとして好きな場所だなあと改めて思いました。完全に初出という作品は多くはないと思うのですが、こうして特集されることで大量の「妖しの娘たち」を見るとそれはゾクゾクいたします。小悪魔的な娘にかどわかされたいという欲望、モダンガールへの嫌悪と愛、凄まじい情念を残酷絵で描く。悪趣味な部分含めて世界的世紀末デカダンの唯美主義、幻想美術に大正~昭和初期のジャパニーズ(やや少女趣味入り)耽美世界が比肩した時代ってやっぱり面白いなあと実感しました。怖い女がいちばんかわいい/死んだ女がいちばんきれい、はある時代の幻想に共犯感覚を覚えながら見るぶんには大変心地よい。

刺青
■チラシにも使用されている橘小夢はかなり点数が多く充実していました。幻想的日本画。狐憑きとか化け猫とか怪談モチーフは怖さのなかにも可愛さや哀しさがあったのですが、何より怖い…というか気持ち悪かった1点は上記の谷崎の「刺青」をモチーフにした絡新婦が貼りついた女の背中の絵でした。あんなにも生々しい蜘蛛が背中に這ってるなんて。蜘蛛の脚の毛がむっちりとした太ももにびちーっと貼りついてる感じとか赤くぬめったような色合いとか大変に恐ろしい。

■画風や引用されている小説の数々には「それにしてもみんなビアズリー風の“魔女”かつ“西洋人のような体躯の肉感的な娘”が大好きだったんだな!というトレンドを感じます。面白かったのが、完全にシュールの域に達した毒婦ブーム。「探偵小説ではいちばんきれいな女性が犯人」とか今やったらむしろ新しいのではないでしょうか……いやそうでもないか。『お伝地獄』とか森下雨村の『青斑猫』とか、設定も挿絵もあやしげな設定を盛りすぎてもはや何がなんだか、という過剰がすごく可笑しくて。「お伝地獄」の小村雪岱の挿絵の下絵も興味深いものでした。“悪女”の「悪事の瞬間の顔は描かない」構図が多いあたりも面白い。

■どうしたって「見てはいけない何か」を思わせる華宵(私この人の絵が最初に見たときから本当に美しいとか色っぽいとかそういうことを越えてめちゃくちゃ怖くてですね・・・少年も少女も描かれた内部には何か得体のしれないものがいる感じで、嫣然と「装ってる」顔が怖くて怖くて)はもちろんのこと、蕗谷虹児や竹中英太郎もさすがの弥生セレクトという美麗かつ「怖い娘たち」が揃っておりました。
鬼火 虞美人草
竹中英太郎は「鬼火」表紙画の歪んだ縮尺、頭の大きさと細い足元の不確かさの「なんかやばい」感じもたまりませんですが、「虞美人草」のストーリーダイジェストにつけられた挿絵の少女漫画テイストがすばらしかったー!このフォントでこのセリフ!「可愛い悪女」としての藤尾。

■個人的に大好きな伊藤彦造の描く幽玄美人や鉄火姐御たちが並ぶのも嬉しかったですね。同行者からの「映画のスチールみたい」って声に「ですよね!ですよね!」と深くうなずきます。
「南総里見八犬伝」浜路砂絵呪縛(すなえしばり)
以前同美術館で開催された「伊藤彦造展」で、小さい頃見て印象に残ってた「南総里見八犬伝」の挿絵がこの人だったのを偶然知ったときは興奮したものです。かっこいい・・・

■いちばん気になったのは謎の画家(男性か女性かもわかっていないそうです)月岡夕美という画家の少女画報掲載イラスト。
tsukioka
他のカットは少女誌だけでなく男性誌にも描いていた人(むしろそちらが中心の人)が多いなか、この人は(少なくともこの名義では)どうやら少女誌の挿絵だけ。大きめのたれ目で細身でとびきりファッショナブル、蠱惑的な大人乙女たち。着物・洋服の柄は結構アバンギャルド。蕗谷虹児系、つまり特に少女漫画直結系の画風、って結局これもまたビアズリーってことなんですけども・・・すてき!

■この展示で紹介されている大正~昭和初期において――今もあまり変わらないのかもしれませんが――「悪女」とは「欲望する女」のことなのだなあ、と思います。好きな人に会いたい。にっくき相手を殺したい。お金がほしい。家などどうでもいいから美しく装いたい。常識に反しても欲望に忠実に楽しく生きたい。眉をひそめられる新しい女性像と、伝統的な「女の情念は怖い」のイメージが重ねられた絵の数々。しかし、その一方でその「悪女」には男女問わず惹かれる人たちがたくさんいた/いる、ということ。時代を越えた「憎しみと憧れが生み出した凄艶な女性美」に思いを馳せながら、暗黒乙女団のメンバーは「これからも私たちはこういう怖い女たちの絵や物語や映画をたくさん見ていきましょうね!」と誓うのでした。

http://www.museum.or.jp/modules/topics/?action=view&id=274
ダイジェストはこのあたりから見られます。大正~昭和初期のイラストレーター・ダイジェストとして、日本耽美文化の水脈をひととおり楽しめると思うので、気になった方はご覧になってみてはいかがでしょうか。6月30日まで開催されています。(@vertigonote)

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