【Movie】バールズ・ビー・アンビシャス!~おばあちゃんの心意気映画5選~

best-exotic-marigold-hotel

こんばんは、@vertigonoteです。
皆様もう『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』はご覧になられたでしょうか?(私はまだです・・・)昨年末には『みんなで一緒に暮らしたら』もありましたし、4月にはダスティン・ホフマンの初監督作『カルテット 人生のオペラハウス』も公開され、なんだか「こういう映画最近多い・・・?」と劇場予告を見て感じられてる方も多いのではないでしょうか。

そう、これらの作品は共通して「余生」映画であり、おばあちゃんたちが「だからこそ、私は自分の思うように生きるのだ!」と可愛くかつある意味では図々しく、人生の歓びを炸裂させる映画だということなのです。老女って、時に少女に大変似ている、と思うんですよね。一度決めたら絶対引かない意地っ張りぶりが。そう、その姿はまさに、城夏子さんがエッセイ内で自称されていた“婆ル”(婆ちゃん+ガール)。こうした心意気あふれる映画のなかの婆ルたちが、私は大好きです。私自身がやたらと逞しいサイボーグみたいな祖母に育てられたおばあちゃん子ということもたぶん関係しているのですが。

というわけで、本日は脇役/主役にかかわらず、私のお気に入りのスーパー乙女おばあちゃんが登場する映画をご紹介していきましょう。

■「ペルセポリス」

ペルセポリス

縦糸に好奇心旺盛なお調子者で暴れん坊のちょっと意地悪なイランの女の子マルジの成長譚を、横糸に1978年から2000年代までの激動の現代イラン史をかけて織り上げられたタペストリー。8割がたモノクロームのアニメーションで綴られる豊かなイメージとともに、胆の据わったハードボイルド女子魂が炸裂している『ペルセポリス』は私の大好きな映画。

この映画でブルジョアかつリベラルな家庭で育ちながらも、時代に翻弄されて国を離れざるをえなくなったがゆえに「どこにいっても異邦人」になってしまう主人公マルジに大きな影響を与えるのは、人生の、女性の大先輩であるおばあちゃん。もうこのおばあちゃんが本当に素晴らしいんですよ!
“毎朝摘んだジャスミンの花をブラジャーにつめてイイ匂いをさせてる”最高の乙女なおばあちゃんのきっぱりとした名言の数々は全部メモをとりたいくらい素敵です。

「いいかい、これからお前を傷つける者たちもたくさんいるだろうけど、そんなときは相手が愚かなんだと思うんだよ、怒りや復讐は最低だからね、相手と同じフィールドに立っちゃいけない」
「離婚なんてたいしたことじゃないよ、一回目は予行演習だったと思えばいい」
「恐れが人の良心を奪う。恐れが人の勇気を奪うんだ。けれどお前は恐れなかった。私の誇りだよ」

主人公に受け継がれていくこのスーパークールかつ愛にあふれた人生哲学、他人に規定されず自分自身の人生を貫く誇りは、今も私の指針になっています。

■「ハロルドとモード 少年は虹を渡る」

ハロルドとモードあるお葬式の日、自殺ごっこに夢中になっている孤独な青年ハロルドは日々をパワフルにパンクに過ごす老婆モードと出会う。気付けば彼女と一緒に過ごすようになり、毎日が少しずつ楽しくなっていくハロルド。やがて芽生える恋。でも・・・

言わずと知れた美しくロマンティックで風変わりなラブストーリー。現実の世界に折り合いがつけられないハロルドと、その「折り合いのつかなさ含めて世界を愛する」モードおばあちゃん。死の気配を濃厚に漂わせたブラックな笑い、ファンタジーなだけではなくあくまでもビビッドな恋の描出。時折生々しく性的な印象を残すのもポイント。次々と予想を越える展開を見せ、予想より素敵な台詞が飛び出します。
この奇妙な生命讃歌が成功したのはキュートなバッド・コートの力はもちろんだけど、何よりパンクなメリー・ポピンズのようなお婆ちゃんルース・ゴードンのチャームの力。あの魅力はいったいどこからくるのでしょうね!

意味のない生のなかで死の夢を見て、周囲に邪険にされればされるほど自己存在を主張するために自殺遊びを試みていたモラトリアム青年ハロルド。その彼がラストシークエンスで見せた本当に本当に懸命な姿には泣くしかありませんでした。生きていく幸福に出会えたからこそ、生きていく悲しみに涙をこぼすことができる・・・それを鮮やかなかたちで教えてくれたモードは、映画史上に残る「婆ル」ではないでしょうか。

■「あしたのパスタはアルデンテ」

あしたのパスタはアルデンテ老舗パスタ会社を継ぐ兄アントニオの社長就任を祝う晩餐会に出席するため、南イタリアに帰郷したトンマーゾ。彼はその夜、家族に黙ってきたことを兄に告白する。家業を継ぐ気はなく小説家を目指していること、そして自分がゲイだということ。一族が集結する晩餐会で、ついに覚悟を決めたトンマーゾが告白しようとした矢先、なんと兄が同じことを先に言い始めて……!
という予告からは陽気な家族コメディなのですが、実際は結構シリアスな、色んな「事情」についての“カムアウト”ストーリー。「他人からどう見えるか」の糸を断ち切れないそれぞれの登場人物の“過去の事情”のしんどさに何度かすごく胸が苦しくなった映画です。「誰にも秘密があって」を象徴するのは・・・・・・ああ!おばあさま!!!

ただ全ての事実を表に出してしまえばよいというものでもなく、大事なのは「あなたがどう生きるかということ」。おばあちゃんが万感を込めて呟く「普通なんて嫌な言葉ね」はずっと心に刻んでおきたい名台詞。「だれかのため」ではなく「わたしのため」に生きること。わかっていても難しい、そのような生き方をどんなに望んでも、私にとってはなかなかそれは叶わない、勇気がないといえばそれまでなのだけれど。だからこそ、凛と背筋を伸ばしたお婆さまの大反逆と、その向こう側で幻視された祝祭はせつなくもとても美しかったのです。

■「ジュリエットからの手紙」

ジュリエットからの手紙婚約者と一緒にイタリア旅行にきたものの、ほったらかされたので仕方なく一人で観光名所の“ジュリエットの家”を訪れたソフィが50年前にイタリアで出会った青年ロレンツォと恋に落ちた英国人女性クレアが書いた一通の恋の悩みを告げる手紙を偶然見つけたことから始まる、ロマンティック・コメディ。スマッシュ・ヒットを飛ばしたのでご覧になっている方も多いでしょう。イタリア!嗚呼憧れのイタリア!陽光の地!その魔法で愛に生きる力を私に!みたいな映画はこれまでにも色々ありますが(『月の輝く夜に』とか、『眺めのいい部屋』とか)今作も良質なロマコメでしたよね。
おいしいものがいっぱいで、太陽と土の匂いがして、みんなが愛に生きる場所イタリア!というイメージだけでできた「観光地」感も含めてとても丁寧に綺麗にWe know what girls like!をパッケージング。全体的に話運びがもっさりしてるのとか、ソフィが「運命の恋」を感じる流れが弱いとか、いくつかの欠点はあるんだけど、こういうベタ甘ロマコメはもちろん私の大好物。

何よりこの映画は敬愛するヴァネッサ・レッドグレイヴ様の婆ルぶりに尽きます!彼女が演じるクレアおばあさまがアマンダ・セイフリッド演じるソフィに呼びかける“マイ・ディア”の響きだけで涙が出そうになりました。母親が家を出たことをずっと寂しく思ってたソフィが、彼女に髪をとかしてもらうシーンは乙女度MAX値!強くて優しい主人公が、ずっと家族として同性の先輩がいてくれたらって思ってたんだろうな、ってのがあのシーンだけで全部伝わる。“ガール”な気持ちを持ち続け、愛に生きるおばあちゃんの優しさに胸打たれます。

■「マルタのやさしい刺繍」

マルタのやさしい刺繍夫に先立たれてぼんやり日々を過ごしていた大人しい80歳のマルタおばあちゃん、自分でデザインして刺繍したランジェリーの店を開くという若き日の夢に向かって超がんばるの巻!という映画。
スイスの小さな村社会の「これまでにないことを女性がすること」が許せない男たちが描かれているので結構しんどい部分もあります。マルタの息子が周囲の男たちの「ババアがいやらしい下着つくってるなんてみっともない」という嘲笑にびくついて、母親の丹精込めてつくった下着にひどい仕打ちをするところとか、もう胃がキリキリする。本人も信仰に背くことだと糾弾されて迷い、何度もあきらめかける。それでも「得意な刺繍で美しい下着をつくって、着る人に幸せな気分になってほしい、それに何より私が楽しみたいの!」と自由に美を求めることに生き甲斐を見い出すおばあちゃんの爽やかさったら!

仲良し女子チームの友情の無敵っぷりも気持ちいい。彼女たちもやがてマルタさん同様に自分たちの夢に向かっていくのです。悲しい出来事もあるけれど、理解されないのは辛いけど、ここで負けたら乙女がすたる!とばかりに家の呪縛を離れた老女たちのはしゃぎ方が楽しいこと!そう、ご存じのとおりこういうおばあちゃんたちが簡単にめげるはずがないのですよね。新しくて人と違うことは軋轢を生むけれど、運命は何歳からだって変えられる。さあ、立ち上がろう!愉快痛快、骨のある女子映画です。

こうしてみるとだいたい「よのなか」にめげない、ということが心意気のもっとも大切な部分。乙女やガールという呼称には年齢なんて関係ないことを確信させてくれる、こうしたおばあちゃんが登場する作品は、いつだって私の背中を押してくれます。人生まだ長い・・・!そんな素敵な「バールズ・ムービー」にスクリーンで出会えることを、私は日々楽しみにしています。(@vertigonote)

広告
%d人のブロガーが「いいね」をつけました。