【Music】乙女のラ・フォル・ジュルネ案内2012

GWの定番ラ・フォル・ジュルネ音楽祭(通称LFJ)が、今年も近づいてまいりました。

1995年、フランス・ブルターニュの都市ナントで生まれたクラシック音楽フェス、日本上陸から早いもので7年目。45分程度のコンサートがおよそ150公演、タイムテーブルから聴きたいライヴを選んでハシゴしていくフェスの醍醐味も定着し、金沢、新潟、びわ湖に鳥栖と、全国へ広がっています。

第1回から東京国際フォーラムに通いつづける私が楽しみなのは、なんといってもその年ごとのテーマ。

だってベートーヴェンやモーツァルトはもちろん、「バッハとバロック」「シューベルトのウィーン」など、時代や都市そのものまでが主役となりうる。テーマにぴったりのお洋服を選んだり、幕間のおしゃべりのためにそれっぽいカフェを選んだり。ひとつのテーマから、イマジネーションが広がります。

 2012年のテーマは、「サクル・リュス(ロシアの祭典)」――今夜はロシアより愛をこめて、最愛の音楽祭をご案内いたします。

 

 

■ロシア500年の物語

「マイは映画『ドクトル・ジバゴ』を観たことがあるかい? あの、世界なんだよ」

LFJの仕掛け人、稀代の音楽プロデューサーにして映画好きのルネ・マルタンは、「サクル・リュス」のヴィジュアル(右)を見せながらこう言いました。

「ここにあるのはロシアの聖堂。そして雪の大平原を走る列車。今年のラ・フォル・ジュルネはぜひ、“ロシア500年の物語”として愉しんでほしいんだ」

16世紀に隆盛した、ヨーロッパの宗教音楽とはまったく別の、ロシア語の、ロシアの響きを持つ教会音楽。

18世紀後半、美しいサンクト・ペテルブルクの街とエルミタージュ美術館の礎をつくった女帝エカチェリーナ2世の宮廷音楽。

いわゆる「国民楽派」――バラキレフ、キュイ、ボロディン、ムソルグスキー、そしてリムスキー=コルサコフら「5人組」と、西側の洗練とバレエを愛したチャイコフスキー。

1917年の十月革命から逃れたストラヴィンスキーとパリのバレエ・リュス(ロシア・バレエ団)……。

「サクル・リュス」が連想させるイメージ、そして音楽は、決してかわいらしいマトリューシカやネッカチーフ、アストラカンの帽子だけではないのです。

 

■3人のヒロイン

「サクル・リュス」が、なぜこれほどゆたかなイメージを喚起するのか。それはさまざまな気分と関係があります――装飾とドラマを求める衝動、暗黒乙女美学、あるいは物語や現実逃避へのあこがれ。3つのヒロイン・イメージとコンサートをご紹介しましょう。

 [type1]アンナ・カレーニナ

情熱を秘めたアンナ派におすすめなのは、なんといっても王道チャイコフスキーとラフマニノフ([115][214][316]など)。この2人の代表曲は、一番大きなホールAで、大迫力で演奏される。

ホールAなら、チケットもまだ手に入るはず。美しい刺繍入りのワンピースとコンサートのあとのディナーで、とびきり優雅でレディな一日を過ごそう。

[Check Out the Movie!]

その昔、ソフィー・マルソーが主演した映画『アンナ・カレーニナ』では、「白鳥」のワルツや「ヴァイオリン・コンチェルト」([315])が印象的に使用されていた。わたしがこの2曲を好きになったのは、映画のおかげ。キーラ・ナイトレイとジュード・ロウが共演するジョー・ライト監督の新作(写真)も待ち遠しい。

 

[type2]ココ・シャネル

ダンディに、スタイリッシュに生きるココ派なら、まず実際に恋愛関係にあったストラヴィンスキーの音楽を([112][185]など)。

同じくロシアの恋人ドミトリー大公との出会いから生まれた香水「No5」。リトル・ブラック・ドレスに身を包み、カペラ・サンクトペテルブルグらの合唱([121][[232][333]など)に身をゆだねるのもいい。

あるいは現代のアヴァンギャルド、勅使川原三郎が典礼曲に振付けたダンス([346])で、更けていく夜を味わおう。

[Check Out the Movie!]

暗黒乙女映画の傑作として(花園界隈で)名高い『シャネル&ストラヴィンスキー』は、予習にもぴったりの作品。冒頭の「春の祭典」事件から、ココが爪弾くピアノ曲まで、ストラヴィンスキーのエッセンスが味わえる。20世紀のセンセーション、ロシア・バレエ団について深めたいなら『バレエ・リュス』もおすすめ。

 

[type3]ナターシャ(『戦争と平和』)

イノセントなナターシャ派には、チュールスカートを翻し、ぺたんこのバレエシューズでバレリーナを気取ってほしい。

音楽は、スクリャービンやメトネル、ラフマニノフの静謐なピアノ曲([137][272][352]など)。「運命(ファトム)!」という印象のロシア音楽にあって、密やかな美しさを湛えて静かに佇む室内楽やピアノ曲は、意外な発見となるだろう。

ただし、ピアノ・リサイタルの会場は小規模が多くて売切続出。早めの準備をお忘れなく。そしてコンサートがはねたらぜひ、三菱一号館あたりでおしゃべりとロシアン・ティを愉しんで。

[Check Out the Movie!]

今年初登場のシネ・コンセール(映画コンサート [211])では、2000年のオスカーアニメ賞を受賞した美しい『ピーターと狼』が取り上げられる。現代的でポエティックな、マルタンいちおしのアニメ映画。朝10時の公演だけれど、妖精ナターシャ派ならばお手のもの?

 

ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン「熱狂の日」音楽祭2012

http://www.lfj.jp/lfj_2012/

※曲目が変更される場合もあります。最新のタイムテーブルは、公式サイトでご確認ください。

(高野麻衣 @otome_classic)

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