【Movie】乙女ヴァンパイア譚/『ブラッディ・パーティ』

こんばんは、@vertigonoteです。

今日はもうすぐDVD発売になる暗黒乙女映画をご案内いたしましょう。ええ、元気いっぱいのチャーミングなキューティー映画も大好きですが、私はダークで血まみれの乙女映画も大好きなのです。その名は『ブラッディ・パーティ』。昨年の暮れに(ホラー映画界のみならずインディーズ界の良心となりつつある)シアターN渋谷にてひっそりと公開されていた独逸産ヴァンパイア・ストーリーです。

■このタイトルでこのパッケージでは苦い少女青春映画の佳作だとは見えにくいかもしれませんが、実はこれパッケージに反し心にゴス乙女がいる人たちにこそ見てほしい映画。『トワイライト』に熱狂する女の子たちとは別の種類の、目周りと爪を黒く塗って世界に中指を突き立てたい衝動に駆られながら、ひとりぼっちを感じている種類の女の子たちのためのせつないヴァンパイア・ストーリーなのです。『ソーシャル・ネットワーク』の予告で使われたえらく不穏に美しいCreepのカヴァーで一躍有名になったScala & Kolacny Brothersが歌うSelf-fulfilling Prophecyにのせて、フレスコ画風の「運命の出会い」が描かれる冒頭からすごくロマンチックで耽美趣味。話が話なのでスラッシャー表現はあるけれど、それさえも「そうしなければ生きていけない」者たちの哀しみにつながっていて、割と『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』直系、あの女性版というと分かりやすくイメージが伝わることでしょう。

■ヴァンパイア・クイーンであるルイーズに「運命の恋人」として選ばれてしまったがゆえに、望まずして血なしに生きていけない/永遠に生き続けられる身体になってしまった、居場所がない不良少女レナ。彼女が過ごす束の間の「仲間たち」とのナイトライフとせつない恋の顛末に重ねられる、3人の女吸血鬼たちの哀しみ。孤独な魂同士が身を寄せ合って、血をわけあって永遠に生きようとするのだけれど、レナは無邪気な殺戮と孤独にすぐに耐えられなくなっていく。このあたりの感情の細やかな波を丁寧にすくいとったレナ役のカロリーネ・ヘルフルトが無垢と暴力性と寂しげな影を全身に漲らせていて素晴らしかった。実際は既に20代後半なのですが、16歳くらいの少女にしか見えない。

不思議な風貌で、痩せっぽちで年齢が分からなくて、どちらかというと気味が悪い離れ目の風変わりな顔立ちなのだけど妙な色気があって、ふとした瞬間が綺麗に見えて目が離せなくなる顔。バスタブのなかで傷が癒えていくときの青白い肌が美しい。バンパイア・クイーンが魅せられるのも、警官の青年がぶん殴られながらもその逞しさに惚れてしまうのも納得させてしまう顔。彼女が震えながら「怖い」を呟く声、冷蔵庫から生肉を取り出して血を啜るときの表情には本当に身を切られるような痛みと悲しみがある。(余談ですが、私の理想のリスベットはこの映画でのカロリーネを見た瞬間から彼女なのです)

■3人の女吸血鬼たちそれぞれの孤独も丁寧に描かれている。ヴァンパイア・クイーン、ルイーズの「運命の相手と再び巡り合えたはず」というレナへの思いの狂おしさや「美しい嘘」の瞬間の絶望。何も考えずナイトライフを楽しんでいるようなノラがレナとエレベーターで二人になったとき「本当に好きな相手でも傷つけてしまうから冷たくする」吐露する寂しさ。そして片手に長煙管、片手に小説がトレードマーク、サイレント映画の女優だったシャルロッテの抱えた癒えぬ哀しみ――このシャルロッテを演じていたジェニファー・ウルリッヒがちょっとただごとではない美しさで、画面に映るたびに眩暈がするほど!

30年代の映画から抜け出てきたようなこの禍々しい美貌!彼女のパートはいちばん美しくて哀しい。娘を残してルイーズとともに行くことを選んだ後悔を抱え続ける彼女の“ミャオウ”の声とともに惨劇の幕があく。彼女が歌う“子守唄”とはこの映画のベストシークエンス。

■と、これだけ褒めておきながら正直完璧とは全くいえない出来で、何百年も生きてきたルイーズたちがあんな雑な仕事しないよ!とか、アクションの金かかってなさは異常(ものすごい低予算なCGのせいで笑いそうになる瞬間が…)とか、レナの視点なのに突然ルイーズの心の声を喋らせるって変なのでは……とか、姿が見える見えないのルールづけが謎じゃないかこれ?とか突っ込み始めたらキリがなく、駄目なとこも色々あるのですが、せつなさ一点突破映画のだからこれでいいのです。野暮ったさ、安っぽさ、泥臭さも含めて、70年代の少女マンガテイスト。あるいは10年前なら多分シネマライズでかかってたんじゃないかな?と思わせる光や音の感じ。なんだか全てが懐かしい。デニス・ガンゼル監督は少なくとも最もゴス乙女たちがヴァンパイア譚に求めているのはこの「懐かしさ」と「せつなさ」である、というポイントを外していないのです。

もしかすると暗黒乙女ヴァンパイア譚として、ひそかに愛される作品として名を残し、10年後くらいにカルト作になっているかもしれません。心にゴス乙女がいることを自認される方は、一見の価値がある作品だと思います。『ブラッディ・パーティ』DVD発売は2012年4月3日の予定です。(@vertigonote)

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