【花園selection】ユベール・ロベール-時間の庭-

こんにちは、@vertigonoteです。昨日は@otome_classicこと高野麻衣ちゃんと国立西洋美術館で開催中の『ユベール・ロベール-時間の庭-』展を鑑賞してきました。

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ポンペイやヘルクラネウムの遺跡発掘に沸いた18世紀、フランスの風景画家ユベール・ロベール(Hubert Robert 1733-1808)は「廃墟のロベール」として名声を築きました。 本展は、世界有数のロベール・コレクションを誇るヴァランス美術館が所蔵する貴重なサンギーヌ(赤チョーク)素描を中心として、初期から晩年まで、ロベールの芸術を日本で初めてまとめて紹介するもので、ピラネージからフラゴナール、ブーシェまで師や仲間の作品もあわせ、131点にのぼる油彩画・素描・版画・家具から構成します。(国立西洋美術館websiteより)

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本日は少し趣向を変えて、鑑賞後の二人のカフェ(とは名ばかりで、ルノアールでしたが!)での会話を再現してみましょう。美術初心者の私たちは絵そのものの技法のことや絵画史はほとんどわかっていないので(笑)、なんとなくユベール・ロベールという画家とその時代のムード、そして自然美や描かれている世界のことを思いつくままにお喋り。誰かと一緒に行く展覧会はこうした楽しみがありますね。

=@vertigonote(ばちこ)です。  =@otome_classic(おとめ)です。

こんなに明るい廃墟だなんて

 「廃墟のロベール」っていうから暗黒乙女モードで行ったら「廃墟」って意味が想像と違ったのにまず驚いたよ私(笑)!廃墟には勝手に「人がいない場所」のイメージがあったんだけど、確かに人が当たり前に行きかう遺跡も「廃墟」だものね。歴史ある建造物が既に打ち捨てられたことさえ忘れられて現世を素朴に生きる民たちの背景(庭)になっている、そしてやがてはロベール自身が理想の廃墟ある「庭」をつくり、それをまた絵画に……というまさに「庭園」美術の画家だったのだなと。

 わたしもやっぱりばちこちゃんの好みを踏まえて、ダークさを想像していたのね。知らずに鍵を開けて「時間の庭」に入ったら、明るくてすこしものうげなプティ・トリアノンだった、という印象が強くて。マリー・アントワネットの世界だった。もちろん、ルソーとかに感化されたあとのね。

 「廃墟」って言葉からのイメージからプティ・トリアノンって想像しないものね(笑) まず冒頭での「ヴィジェ・ルブランの基によるユベール・ロベールの肖像」に「えっ、ロココの時代と重なってたひとだったの?」と。美術に決して明るくないうえ、事前に情報をほとんど調べずにいったので盟友がフラゴナールであることも知らなかった!

 そうなの。朝からロココの作曲家クープランを聴いていたから、予期せぬ再会にテンションがあがっちゃった。バレてたよね?

  バレてたよ!おとめちゃん最初の年表からしてえっらいテンションあがってたから(笑)!クープランのどの曲がイメージにあうかしら?

 クープランってね、わりと日常のささいな情景とか、お庭の風景を描くような鍵盤曲が多いの。タイトルも、「神秘の障壁」みたいな詩的なものから「胸飾りのリボン」「プロヴァンスの水夫」みたいな日常系まであって……洗濯女ってなかったかな? ロベールはたくさん描いてたよね(笑)

 そうそう、洗濯女のモチーフすごく多かった!

 あと、母と子とか、写生する青年?

 母と子が多くて、男性も描かれているはずなんだけどあまり印象に残ってない(笑)。写生する自分も画のなかに描きこまれてるのが多かったね。歴史の遺産という浪漫には気づくことなく当たり前に生活空間にしている当時の現代人たちが印象的だった。あくまでも素朴な日常生活の小品の背景に遺跡という浪漫があるんだよね。そのへんもクープラン的なのかもしれない。

 日常のなかに非日常の美しいものを描いちゃう。わたし、少しあとの時代のひとかな? アングルの言葉ですきなのがあって――「真実ということに関していえば、わたしは多少の危険を冒してでも、それよりほんのすこし美しいほうがすきです」っていうの。写実より、様式美。これってエリック・ロメールの映画なんかにも通じるわたしのすきな作品の共通項で、さすがフランス人、アール・ドゥ・ヴィーヴルだよ(笑)。

わたしのお気に入り

 そういえば、暗黒時代なはずの革命期の前にも後にも全然画風が変わってないのとかも面白かった。描きたい「ほんのすこし美しい」ものが一貫してる人なんだなあ。おとめちゃんの今回のイチオシ作は?

 《廃墟のなかの水飲み場》かな。廃墟なのに、給湯室ふうなおちゃめさがあるの。あと、ロベールじゃないけど《トランジション様式の箪笥》! ロココとゴシックをつなぐ移行(トランジション)様式の存在をはじめて知ったよ! 衝撃的だった。いわゆるロココというかんじの華美さはないけれど、取手がちゃんとリボンのかたち。それから、寄木細工の白鳥が文様風でかわいいの! あれは本気でお部屋にほしいとおもった。わたしは”暮らし萌え”なので、やっぱりインテリアとかも気になってしまって。ジョフラン夫人の書斎なんかもすてきだったよ、唯一の室内のスケッチ。ばちこさまのおきにいりは?

 私は 初期作品の 《セプティミウス・セウェルス門のヴァリエーション》だな。アーチの向こうにピラミッド。アーチのモチーフはとにかく多かったよね。「光射す廃墟」のモチーフが手を変え品を変え、サンギーヌの素描にも、油彩の作品にも、造園スタイルにも、繰り返し描かれているんだけど、アーチの向こうや崩れた石垣の向こうにはいつも光があり、そこにはときとして幻視されたピラミッドやコロッセオもある……という描くテーマの元素が詰まった作品だったと思う。

 ミュージアムショップで真っ先にポストカード買ってたね!

 うん。ああいう奇想は決して珍しい手法ではないと思うのだけど、ロベールは奇想ときかなければ本当にそこにあったかに感じられるようなあたたかい情景として描いているのが面白かった。 アーチの向こうに永遠を見ている感じ。あと「なぎ倒された木」とかもよかったな。初期のほうがより幻想美があって私好みなのかも。本当にローマの風景をそのまんまに描いているのだけど物語があるというか。それこそ「花園」的なものがあって。

「庭園画家」の光射す廃墟と緑

 そう、まさに「花園」的! 花はあまり描かれてないけれど、秘密の花園なのは間違いないよ! ロベールが「国王の庭園デザイナー」で、マリー・アントワネットの劇場の設計にまで携わったとか全然知らなかった! あの時代があれほどの庭園ブームだったとは――もちろんルソーの「自然に帰れ」だから当然なんだけど、びっくり。しかも幾何学のいかにもな庭園じゃなくて、英国的な荒れ果てたふうのね。

 ユベール・ロベールの庭園は「廃墟を当たり前に生活の場にしている」というのが理想になってるから“廃墟風”の建物とか造型されてるんだよね。さらにそれを再び画に描いて2次元に引き戻してたりするのが不思議な感じだったなあ。なぎ倒された木、傷んだ石垣に這う蔓ってもうそれだけで荒地の浪漫!あとフラゴナールのローマの水道橋のスケッチには「カリオストロの城」とかラピュタとか思い出してた。同質の喪われた場所へのときめきだよね!モデルが同じだから当たり前なんだけど(笑)。

 確かに同じ種類の浪漫! ロココからの揺り戻し的なゴシック・リヴァイヴァルのはしりの時代でもあるよね?

  同時開催として常設展側の企画室でピラネージ「牢獄」展やってたのは象徴的かもね。ピラネージのほうは思いっきりその雰囲気。ロベールはもっと穏やかなかんじだけど。

 あと、イタリアなどへのグランド・ツアーの時代か。序盤、風光明媚なイタリアの遺跡の絵がつづいて、ロベールがフランスに戻ったとたんに色彩がもやっとパステルがかったというか、はっきりと変化したのには驚いた。

 やわらかさという点だと素描におけるサンギーヌ(赤チョーク)の重要性も語らなくちゃ!サンギーヌ率すごくたかかったね!

 うん、ロベールの穏やかさは、サンギーヌ効果かも。あ、メモにsanguineって得意げに書いてある! わたし、フランス語の字面読んでるだけで陶酔できるという特技があるから(笑)。

 陶酔!さすがの妄想乙女力! 実は、私は勝手に求めていたものとのギャップがあったので暗黒乙女的には少しもの足りなかったんだけど(笑)、最後まで回ってみれば「時間の庭」という副題も乙女的でぴったりだったね。

 うん。当時の音楽や歴史にも連想が広がっていく。大好きな時代を彩ってた画家にまだ知らないひとがきっとたくさんいるんだなあって。雨上がりの西洋美術館というロケーションにもぴったりで、すてきな展示だった!

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http://www.tokyo-np.co.jp/event/bi/robert/

「ユベール・ロベール-時間の庭-」展の国立西洋美術館での会期は2012年3月6日(火)〜5月20日(日)。うすぐもりのまだ肌寒い春の日にふさわしい、やわらかな光にはるかな時の流れを思う、おだやかで優美な緑の園の世界を、あなたに。また、こちらの記事を読むと『生きる石』 フェランテ・フェランティ写真展にも興味が沸いてきます。(@vertigonote/@otome_classic)

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