【Music】ガールロックは手折れない/Lillix『Tigerlily』

こんばんは、ガーリエンヌです。

今日はLillixのアルバム 『Tigerlily』(2010年、日本盤は2011年)をご紹介します。

2000年代を代表する音楽ジャンルに”ガールロック”があります。2002年、アヴリル・ラヴィーンがデビューしたときのことを今でも覚えています。「なんかやたら目の周りが黒いけど、超可愛い女の子が出てきた」と思っていたら、あれよあれよという間に世界的大ヒットに。女の子が自らもギターを掻きならしながら、ボーイズ・バンドを従えてロック(っぽい曲)を歌う姿は、とても新鮮に映りました。それまでソロの女の子歌手といえば、ブリトニーやアギレラといった「踊れるセクシー系」が主流だったシーンが、ガラリと変化してしまったのです。

そこで何が起きるかというと、各レーベルによるアヴリルフォロワーの乱発です。ユニバーサルからはアシュリー・シンプソンが、ソニーからはアナ・ジョンソンが、EMIからはスカイ・スイートナムが……と、次なるヒットを求めてシーンは狂乱状態に。猫も杓子もガールロック、雨後の筍ガールロック、一事が万事ガールロック……と無駄にことわざを使ってみましたが(用法も違う)、とにかくあまたのアーティストがデビューしては消え、デビューしては消え、を繰り返しました。そして2000年代が終わる頃、そこは焼け野が原となっていました。

Lillixもそんな渦に投げ入れられたバンドと言えます。カナダにてターシャ・レイとレイシー・リーのエヴァン姉妹を中心に結成されたこのガールズバンドは、2003年、マドンナが主宰する音楽レーベル・マヴェリックよりデビュー。マヴェリックといえばアラニス・モリセットやミシェル・ブランチを輩出してきた名門で、ガールズバンドのデビューとしてはこれ以上華やかな門出はないといってもいいでしょう。アヴリルを手掛けたプロデューサーチーム、The Matrixがバックアップし、万全の体制で作られたデビューアルバム『Falling Uphill』は、ポップで明るいガールロックの見本のような作品でした。文化祭で演奏している姿がたやすく想像できる音楽とでもいいましょうか。ドラム以外のメンバーがメインボーカルをとれるという構成もウケて、日本だけでも20万枚近くを売り上げました。
しかし、一発売るより、継続させるほうが難しいのが世の常。LILLIXもメンバーの入れ替え、レーベルとの契約切れなどに直面し、セカンドアルバム以後消息不明に。同時にガールロック市場自体が収縮・閑散期へ突入してしまいました。

前置きが長くなりましたが、「Lillixがサードアルバム発売!」というニュースを聞いたときも、「まだ生きてたのかよ!」という感想が素直なところでした。姉妹以外のメンバー全員抜けてるし、もう20代中盤だし、インディーズだし、どうなのよ……と思って聴いてみたら、これが、よかった!

どの曲もキャッチーで、DIY感にあふれていて、どこかなつかしい。バンド仕立てだけど、ふたりのハーモニーとキーボードラインが甘酸っぱい彩りを与えています。エレクトロ要素も、流行のというよりは80年代のエレポップ風で、彼女たちが本来持っていた「いなたいガールロック」という個性を引きたてています。全9曲約30分という短さも潔い。


「Dreamland」ミュージックビデオ。ちょっぴりチープな『インセプション』もしくは『エターナルサンシャイン』という感じ。

正直、ここに収録されているのはガツン!とくるようなかっこいいロックというわけではありません。でもバンドミュージックの楽しさ、ガールパワー、親近感みたいなものが思いきり詰め込まれていて、聴いていて嬉しくなる。懐古趣味というわけでもなくて、ミュージシャンシップと乙女要素がガチンコでぶつかりあって生まれた音楽。「やりたいことを全部やっちゃったけどいいよね!」という開き直りがとても愛おしい。それが紆余曲折を経て辿りついた境地ならなおさら。

個人的にこのアルバムを象徴すると思っている名曲「Believer」。

Hey there believer
Give me a sign
Are you here tonight?
Open my eyes
Hey there believer
One more time
Are you here tonight?
Are you here tonight?
Make me a believer

インタビューを読むと、やはりこのアルバムまでに相当な苦難があったようです。それでも彼女たちは諦めず、信じて突き進みました。
「私たちは成功したと思った時にすべてを失った。一瞬で何もかも奪われた。家族と音楽への情熱のお陰で続けることができたわ。Laceyと私が彼女のキーボードでメロディを歌う、言わば原点に戻ることができた。子供に戻ったような、何の重圧も感じず、97年にバンドを結成した頃のように。だからニュー・アルバムに『Tigerlily』というタイトルをつけたのよ。それが私たちの最初のバンドの名前だったから」(ターシャ・レイ/上記サイトより引用)

焼け野が原の果てに、凛と咲いていたタイガーリリー。温室で培養されたのではない、野生の美しさと自由がここにあります。

You think I’m scared, but I’m laughing
To see the clouds start rolling in
You’d think I’m sad, but I’m smiling
I feel your breath under my skin

(@girliennes)

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