【Book】わたしの人生はわたしのもの!「青い城」

こんばんは。@vertigonoteです。
記念すべき初投稿記事でご紹介するのは、

青い城 (角川文庫)/モンゴメリ。
最近読んだなかでいちばん好きなガール小説です。
今まで読んでなかったのを後悔しましたよ…
主人公ヴァランシーが、抱きしめたくなるほどいとおしい。

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もう、冒頭からして傑作の予感がただならない。

夜明け前、まだ誰もが眠っている、しんとしたもの寂しい時、ヴァランシーは目が覚めてしまった。よく眠れなかったのだ。夜があければ二十九歳になる独身の女が、未婚女は男をつかまえられない女としかみなされない社会にいれば、よく眠れないことだって時にはあるだろう。

こ、これはすべての喪女(≒非モテ女子)(パートナーがいるいないに関わらずメンタリティの問題です、念のため)は読まなくてはならない小説っぽいような・・・と思って読み始めたら本当に止まらなくなった。不思議なタイトルは「心のなかにある憧れの場所」。子どものころからちんちくりんでいつも冴えない冴えないと言われ続けて委縮しきった29歳未婚女子がいつも夢想していた、ロマンスの主人公になれる脳内の楽園のこと・・・もうこれだけで号泣。

かわいい従妹と比較され続け、身体が弱いことさえも彼女の悪いことのように言い募られ、何もかも否定されてきたヴァランシー。もちろん男性から言い寄られたこともなければ、その状況を変えられる見込みもない。永遠に続きそうな孤独のなかの現実逃避、「青い城」の夢。何なんですかもうこのいたたまれない物語は……

しかしそんなヒロインであるヴァランシーは、あることをきっかけに「どうせ死んだような人生なんだから自分のために生きてみたい」とどんどん暴走していく。自己嫌悪の塊だった冒頭では誰にも口答えできなかった彼女の大爆発のなんと気持ちいいことか!周囲に「おかしくなった」と言われながらも「もう二度と元の私に戻るものですか!」と全力で自分の人生を勝ち取っていく。家を飛び出し、自分を特別視しない飲んだくれの“がなりやアベル”の家で若いお嬢さんの看病を手伝い、前から気になっていた男性に自分から近付き、ダンスし、新しい「自分の家」を見つけていく。感情を押し殺していた人間の解放感は、箱のような家から森というロケーションの変化にもあらわれる。ただやけっぱちな割にはささやかな冒険なのが、いかに彼女が「自分の人生」を持ち得なかったかを感じさせるのもせつない。

「これまで、あたしはずっと、他人を喜ばせようとしてきて失敗したわ。でもこれからは自分を喜ばせることにしよう。もう二度と、見せかけのふりはしまい。あたしは、うそや、見せかけや、ごまかしばかりを吸って生きてきたのよ。本当のことを言えるってのは、なんてぜいたくなことなんでしょう!今までやりたいと思っていたことを全部やるのは無理かもしれないけれど、やりたくないことは、もう一切しないわ。おかあさんがふくれるなら、好きなだけふくれていればいいわ――もう、気にするもんですか。『絶望は解放、希望は束縛』よ」

とはいえ、ヴァランシー嬢は本性出したら「性格がいい」じゃなくて「いい性格してる」というのもまた、素晴らしい。「とんでもないうそつきばばあだわ!」とか割と容赦なく周囲を罵倒する心の声が痛快でたまらない。かなり深刻なシチュエーションなのに冷静に脳内で“レッドファーン製薬”の宣伝文句で突っ込みを入れてるところなんかも最高だった。

ここに描かれたテーマは結構重い、そして現代でも決して珍しい問題ではない。ヴァランシーほどに酷い扱いは受けたことがなくたって、序盤の家族・親族・世間からの「あの子は●●だから」の決めつけの嵐に全部口答えしたい気持ちを押し殺す、あの半端ないいたたまれなさにどこかで覚えがある女の子たち(自分含)を私はいっぱい知っている。そしてあの「いたたまれなさ」を感じたことがある人はきっと全員がギャー!と叫ぶだろう――それほどに、あの序盤はつらい。その孤独、その痛み、その周囲からの「あの子はどうせ」が「私はどうせ」として刷り込まれてしまうことの哀しみを知っている女性作家が、ここまで後半で全力を出してとびっきり甘いロマンス小説にしたことの意味を考えるとまた一層泣けてくる。

アン1作目とエミリー・シリーズしか読んでない(偏ってる)私なのだけれど、これを読んで初めてモンゴメリ女史は本当に女子の味方だったのね、と実感して胸が熱くなった。ああバカみたいだけど私はやっぱりハッピーエンドを信じてるし愛してるのだ。わたしの人生はわたしのもの!大好きな1冊です。(@vertigonote)

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