【COMIC】「マンガMee」オリジナル漫画おすすめ10作品

こんにちは、ガーリエンヌです。
集英社の女性向け漫画アプリ「マンガMee」。『NANA』や『君に届け』といった名作が読めるということで、ダウンロードしている方も多いかと思います。王道から新作まで多数の少女漫画・女性漫画がそろい、無料で読み進められるものが多い(1日に読める上限あり)のも特徴です。

今回ご紹介したいのは、マンガMeeオリジナル作品。要は紙の雑誌ではなく、アプリだけで連載している作品です。ドラマ化された『サレタガワのブルー』をはじめ、人気作は紙のコミックス化されるものも。

この1年、アプリで作品を読み漁ったなかから、いま花園magazineで紹介したい作品はこちら! ※画像をタップすると試し読みページに飛びます

『隠したがりの同期くん』(袖山みみり先生)

可愛い絵柄で、テンポよく読めるオフィスラブコメ。「ヒロインが筋肉大好き女子」という設定なのですが、告白するときに両手でプロテインのシェイカーを振っていたり、細かいギャグが随所に効いていて、読みながらずっと笑ってしまいます。もちろん胸キュンも! 悪人が出てこないのもすごく今っぽい。ふたりのチャーミングなやりとりを延々見ていたくなります。

『ぽちゃっと恋をメシあがれ!』(Studio Mee)

ヒロインが作中で何度も痩せたり太ったりする設定が斬新。いきなり美女に変身する、もつれあったはずみでキスする、出張先で宿の手違いで同じ部屋に泊まるなど、少女漫画の定石が、食べ物関連のギャグで彩られながら、これでもかとぶち込まれて気持ちがいい。ヒーローが当初かなりの俺様(でもヒロインに振り回されてる)ですが、あとで伏線回収されるのでご安心を。

『肉と恋』(結木万紀子先生)

こちらも食べ物系(?)。イケメンだけど無気力な学生生活を送っていた主人公が、野獣のように食いまくるクラスメイトの女子・肉原とひょんなことから仲良くなって始まる青春ストーリー。とにかく肉原さんがふてぶてしいまでの存在感で、読んでいるだけで元気になれる。一方で10代ならではの悩みや葛藤が徐々にわかる展開もぐっときます。来週最終回!

『ハジメテノサツジン』(甘味先生)

名門女子校を舞台に繰り広げられるサスペンス。早い段階で殺人事件(!)が起き、巻き込まれたような形の主人公がいったいどうなっていくのか、読んでいて不安になるのに、目が離せません。個性豊かなキャラクターが予想を裏切る行動をしたり、怖いのになぜか笑えてしまう展開があったり、すごい…と毎回うならされています。どうにか救われてほしい!

『奈落の花』(あいだ夏波先生)

『スイッチガール‼』で知られるあいだ先生のタテカラー作品。バナーからしてクセが強いんですが、とにかく話が面白くて止まらない! 女同士のドロドロもの…で終わらず、人の心の醜い部分も含めて連帯し合いたい、と感動的な気持ちにさせられるヒューマンドラマ。48話の「…さ! あたしはオヤジに貢がせに あんたは女に貢がせに お仕事しなきゃ借金返せないからね!」というジュリのセリフが好きすぎます(読めばわかる)。完結済み。

『大キライとプロポーズ〜入れ替わった婚約者がガチクズだった件〜』(東ねね先生)

プロポーズを受けた日。幸せいっぱいのはずが、婚約者と中身が入れ替わってしまった!? しかも次々と明らかになる、彼が隠していた“ガチクズ”な素顔…。途中まで、婚約者が本当に嫌なやつで「こんな男とは早く別れたほうがいい! あっ、入れ替わってるから別れられないじゃん…詰んだ」状態なんですが、物語が進むにつれ応援ポイントが増え、最終的には「あなたたち永遠に幸せになってね」と親のような気持ちになっていました。感動をありがとう…。完結済み。

『きみのすきなひと』(こう森先生)

恋より仕事、な編集者のヒロインの前に現れた、謎めいた年下男子。偶然の出会いかと思いきや、彼にはひとつの思惑が…。ロマンスとミステリーの塩梅がちょうどよく、静かなのにエモい、独特の世界観があります。ファッション誌編集部が舞台だけあって、キャラクターの髪型&ファッションがみんな可愛くておしゃれなのも見ていて楽しい。完結済み。

『横濱デッドウォーカー』(髙井野花先生)

死体が苦手な警察官・大上が配属されたのは「特殊犯特別対策係」。個性豊かなメンバーたちと、「しゃべる死体」殺人事件の捜査に当たることになるが…。どちらかというと淡白な絵柄ながら、怖さ、エグさの表現が秀逸で、ヒェッとなりながらも読む手が止まりませんでした。ハマる人はかなりハマる作品だと思う。全14話と短めですが、話数以上の読みごたえ&余韻があります。完結済み。

『偽り姫のメソッド』(Studio Mee)

物語の悪役に転生した女優のヒロインが、持ち前の演技力でアンハッピーエンドを回避し、生き残りを目指す! 花園magazine創設メンバーである高野麻衣さんが原作を担当。異世界ものらしく華やかな画面、衣装、背景も魅力です。「あの冴え冴えと輝く美貌を嫌がる女なんて居ませんわ…」というセリフなど、“麻衣節”を感じながら読むのも個人的な愉しみです。

ここまで9作品ご紹介しました。そして最後の1作は…宣伝も兼ねてご紹介させてください!

『死にたい人妻と溺愛強盗』(Studio Mee)

モラハラ夫と冷たい結婚生活を送る銀行員の礼。唯一の心の拠り所は、年下の優しいキッチンカー店主・美希生と、素でおしゃべりできるランチタイムだった。そんなある日、隠れて避妊薬を飲んでいたことが夫にばれ、仕事を辞めさせられることに。絶望する礼の前に現れたのは…覆面の銀行強盗! しかも正体は美希生!? 大金と礼を奪い去り、キッチンカーに乗り込んだ美希生は、「あなたのことが好きだから、このお金を楽しく使いきって、流氷で一緒に死のう」と持ちかける。失うものがない礼は心中の旅に同意するが、美希生の真の目的は別にあって…?

スタジオ分業制の本作、わたくしガーリエンヌがストーリーを担当しております(佐井識名義)。まさか自分が少女漫画の殿堂、集英社で原作を書くことになるとは。とはいえ直球の溺愛ものになるわけもなく、大金が舞い散り、思惑や因縁が交差し、ラブとスリルとミステリーが彩るエンタメ作品となっております。

趣味で小説を書き始めて丸12年、これまではひとりで細々と(喫茶マリエールという仲間はいたけど)創作にいそしんできましたが、自分の妄想が美麗な線と色で漫画になっていくのが本当に楽しいです。そのへんの制作裏話も、おいおいどこかでできたらなと思っています。

気になった作品があったら、ぜひ読んでみてください。アプリのダウンロードはマンガMeeの公式サイトもしくは直接App Storeからどうぞ~!

@girliennes

【Fashion】1週間コーディネートを撮影してわかったこと

お久しぶりです、ガーリエンヌです。
こちらを更新していない間も、ちまちまとコンテンツを発信してはいました。その最たる例が、Twitterで3~4か月に1度のペースで更新している「実録1週間コーディネートシリーズ」です。

最新の更新は、2022年9月。

実録1週間コーディネートとは、その名の通り、同じ週の月曜日~日曜日の7日分、実際に着たコーディネートをご紹介するものです。

2019年6月から開始し、2022年9月分で12回目に。すべての投稿はガーリエンヌのnoteから見られます。

ご覧いただければわかるとおり、イットなブランド品やファッション性の高いアイテムを使っているわけではないですし、普通体型ですし(なので置き写真で構成してる)、我こそはファッショナブル人間!と思っているわけでもありません。でも自分なりのおしゃれは好きだし、日々何をどう考えてコーディネートを選んでいるのか、という思考実験そのものがコンテンツになりうるのかなと。

実際の生活から抽出しているので、Tシャツ+パンツのみ、みたいな日ももちろんあります。それも含めて楽しんでもらえたらな、と考えています。

そんな気持ちでやっている1週間コーディネートシリーズですが、いろいろとメリットがありました。

・自分の持っているアイテムを把握でき、たりないもの、次に買うべきものが見つかりやすくなる

・翌年以降、「この時期って何着てたっけ?」をすぐ振り返られる

・自分が長く着るもの、逆にすぐ手放すものの知見が蓄積され、買い物に失敗しづらくなる

3年分の投稿を見返していると、「またこれ着てる!」アイテムもあれば、買ったけどこのあとすぐ手放したんだよな……というアイテムもあります。

ちなみにもっとも頻出なのは、これは納得ですが、黒のシンプルなストレートパンツ。

Omekashiで2014年に買ったもの。つまりもう8年もはいている! 間違いなく3周分くらい元をとっています。9.5分丈くらいなのがちょうどいい。ちなみにデニムは私にとっては普段着ではなく気合を入れてはくものなので、登板率は低めです。

次によく着ていたのが、緑色のロングスカート。

5000円くらいでプチプラだったんですが、ウエストゴムでらくちん、元気が出る色で、お気に入りです。あと見てくれた人のいいね率が高い気がする。

トップスの登板率は割とばらけていますが、このロイヤルブルーのニットはよく着ているかな。

ジャストフィットなシルエットと、やっぱり色が好き。5~6年前にdholicで買ったもの。なのでこれもプチプラ……というか、お手頃価格だったからこそ気負わずバンバン着られるという側面もあるよね。

この秋は、トレンドのツイードベストを買ってみました。面倒くさがり&重ね着が苦手なので「1枚で着られない服は買わない」という信条があり、ベストやジレの類には手を出してこなかったんだけど、トップスだと思うからダメなんだ、ベストはアウターもしくは小物だなと考えたら、アリだなと。ポケットつきのものを買ったので、ポケットのないワンピなどに重ねると便利な気がしている。

あとはよくはいていたキャメル色のパンツがくたびれて処分したので、代わりになるようなワイドシルエットのパンツと、主役級のニット、ハイブランドのアクセサリーか小物を買えたらな、と思っています。

@girliennes

食卓を彩るお気に入りの器

こんにちは、Chiaです。久しぶりの更新となりますが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。以前の記事で「大人になると、とくに女性は健康、園芸、食器の話題が増えがち」説が挙げられていましたが、私も例に漏れず「食器沼」にハマった一人です。特にステイホームが日常となってからは、自炊する機会が増えたため、料理に合う器を探すようになりました。

というわけで、今回はお気に入りの器を時系列で振り返ってみたいと思います。

■小鹿田焼

持っている器の中でも古株で、10年以上前に購入しました。新婚当初だったので、人を招いたときにも使えるような、インパクトのある大皿が欲しいと思って雑貨屋さんで購入。小鹿田焼については詳しく知らなかったのですが、厚みがあって土の温もりがあるのと、飛び鉋の模様がヘリンボーンのようで素敵だなと思いました。最初は恐る恐る使っていたのですが、かなり丈夫なことがわかったので、今では和洋問わず大皿料理には頻繁に登場する一枚です。ボリュームのあるお肉などを乗せても受け止めてくれる懐の広さがあります。

■やちむん

小鹿田焼と同時期に購入したのが沖縄のやちむんです。こちらも厚みがある焼き物で、「丈夫そうだな」と思って購入しました。そして実際に割れにくいです。柄がカラフルで素朴な雰囲気があって、和食よりも洋食やエスニックに合わせることが多いです。特に暑い国の料理にはぴったりだと思います。

■城進さんの器

ステイホーム中に購入したのが、三重県の伊賀で作陶されている城進さんの器です。アフリカの泥染の模様をモチーフにしたという鉄絵のシリーズは、無国籍な雰囲気が魅力的で、やや無骨な感じながら温かみを感じます。勝手に色合いがアボカドっぽいなと思って、ワカモレの器にすることが多いですが、豆を使ったサラダ、煮物などを乗せることもあります。

■巳亦敬一さんのグラス

札幌市にてガラスの器を制作している、巳亦敬一さんのグラス。 北海道で最も古い歴史を持つガラス工房の三代目だということですが、どことなくレトロな雰囲気が素敵です。自家製ジンジャーエールや炭酸水+レモンを入れると、暑い日にも涼しげで気に入っています。大量生産のものとは違い、空気が入っていたり、透明ではなかったり、厚みがあったり、個体差があるのが手作りのガラス製品の魅力。グラスならしまう場所もあまり取らないですし、使用頻度も高いので、お勧めしたい一品です。

いかがでしたか。今回はたまたま「つちもの」=陶器ばかり紹介していますが、いずれ「いしもの」=磁器も紹介できたらなあと思います。コロナ禍でなかなか雑貨屋巡りや窯元に行くことができませんが、オンライン陶器市なども開催されているので、また気になる器をチェックしていきたいなと思っています。

(Chia@skintmint)

【Music】2010年代のベスト曲<ガーリエンヌ編>

2019年12月31日、つまり2010年代最後の日にお送りします。ガーリエンヌの「2010年代ベスト」曲編です。

10. Spending All My Time/Perfume(2012)

Perfumeは、私にとってはずっと「本人たちには非常な敬意を払っているけど、楽曲的にこれだ!というのがじつはない」という存在でした。が、それを上書きしてくれたのがこの曲。多くを語らず、機械的に同じ歌詞が繰り返されるだけ…のはずなのに、この典雅さと、発せられるメッセージの大きさよ。いちポップグループの域を脱して、彼女たちの生き様そのものが音楽になっている証拠だと思う。
「東」を想起させる制服のようなファッション、超能力実験をテーマにしたというビデオも、2010年代のトピックある百合SFを先取りしている…と言っても言い過ぎではないはず。

9.Do Or Die/Doverman Infinity(2016)

2010年代のエンタメエポックメイキングといえば、LDHのHiGH&LoWシリーズを外すことはできません。
「Higher Ground」も「Run This Town」も「Top Down」も大好きだけど、カラオケでいちばん歌ったのが、山王連合会のテーマソングであるこの曲。

付きまとう試練 神からのご指名
また俺かよ けどもう動じねぇ

一発目からこのパンチライン。全編、己を鼓舞しまくる歌詞に最高にたぎる。
細かいこと言うと、自分自身に対して歌っているだけでなくて、さらっと「Let me take your heart to my story」の一言が入ることで、仲間や“君”がいるって存在を感じさせるのも上手いなーと思います。
HIROさん! 20年代もお世話になります!!

8. Your Best American Girl/Mitski(2016)

日米ハーフ、2019年のフジロックのステージも話題を呼んだミツキ。この曲に関しては、もう本当にサビの歌詞がすごい。

Your mother wouldn’t approve of how my mother raised me
But I do, I think I do
And you’re an all-American boy
I guess I couldn’t help trying to be your best American girl

あなたのお母さんは、私が母にどう育てられたかなんて、わかることはないでしょう
でも私はわかる、わかると思う
あなたは生粋のアメリカンボーイ
私はあなたの「ベストアメリカンガール」にはなれない

深夜のツイッターか? というくらい心の声がダダもれなのに、メロディと完全に一致していて、曲のサビとして成立している。何回聴いても一緒になって胸を引き裂かれるほどエモーショナル。

7. You Need Me, I Don’t Need You/Ed Sheeran(2011)

素朴な容貌の赤毛のフォークシンガーが、マシンガンのごとき早口で、皮肉たっぷりの歌詞を歌う…見事に度肝を抜かれました。その後もヒット曲を連発しているけど、私はこの曲がいちばん好き。
最後に一瞬だけ本人の顔が写るモノクロのビデオも超クール。

6. The Sound/The 1975(2016)

シンセサイザーがきらめくキャッチーなダンスチューンであると同時に、シビアな失恋ソング。「君が近くに来たら、心臓の音でわかるんだ」とサビで歌って、ハッピーなラブソングに見せておいて、思いきり裏切るのがこのバンドらしい。
個人的に大好きな映画である『世界一キライなあなたに』(2016)の重要シーンでかかったことも含め、強烈に「2010年代」のイメージで刻印されています。

5. Teenage Dream/Katy Perry(2010)

大人だからこそ歌える“Teenage Dream”の説得力。
この曲を発表したのは、ラッセル・ブランドと婚約して幸せの絶頂の時期。現実は、その数年後に破局を迎えてしまうのだけど、「We can dance, until we die / You and I, will be young forever」と歌われる瞬間の真実は永遠。

4. Young And Beautiful/Lana Del Rey(2013)

変わり映えがしない、マンネリなどと言われようとも、アーティストにはしつこく繰り返し取り上げるべきテーマがある。ラナ・デル・レイにとってのそれは、愛を捧げること、喪失、そしてアメリカの夏の美しさについて。
3つの要素が見事に結晶化したこのバラードは、『華麗なるギャツビー』の世界観そのままに、聴く者を白昼夢のような陶酔に引きずり込みます。

3. Lean On/Major Lazer & DJ Snake feat. MØ(2015)

10年代はDJがスーパースターになったディケイドでもありますが、それを象徴するメガヒット曲。三つ編み×アディダスというアイコニックなファッション、ピンクが印象的なインドの風景、ゆるいダンスのビデオも中毒性が高くてハマりました。
あと何度聴いても、どうしても雨宮まみさんのことを思い出しちゃうね。

2. Boom Clap/Charli XCX(2014)

Boom,Boom,Boom Clap!という直球のイントロが脳天に響くたび、曲が終わるまで3分間、(気分的に)直立したまま聴きとおしてしまう。
暴力的なまでの瑞々しさは、青春としか言いようがない。その後のDIY精神を忘れないキャリアも頼もしく、次の10年でいよいよ大成しそうなアーティスト。

1. We Found Love/Rihanna feat.Calvin Harris(2012)

合法ギリギリの“聴くドラッグ”。サマーソニック(2012)で流れたときは会場が異様な狂乱状態に陥って、私も頭が真っ白になった。
目を背けたくなるのに凝視してしまうビデオも含めて、2010年代でもっとも危険で刹那的で、そして哀しいラブソングです。

【次点】

The Chemichal Brothers「Swoon」(2010)
Talor Swift「We Are Never Ever Getting Back Together」(2012)
Aimer「RE:I AM」(2013)
The Naked And The Famous「Hearts Like Ours」(2013)
ゲスの極み乙女。「猟奇的なキスを私にして」(2014)
Ariana Grande feat.Iggy Azalea「Problem」(2014)
Qrion「beach」(2015)
Rina Sawayama「Alterlife」(2017)
Ariana Grande「Thank You,Next」(2018)

2010年代の総評に関しては、【Music】2010年代のベストアルバム<ガーリエンヌ編> もご覧ください。

それではみなさん、良いお年を!

@girliennes

【Music】2010年代のベストアルバム<Chia編>

2010年代のベストを振り返る企画、今回はChiaが選ぶアルバム編です。

10. Sound & Color/ Alabama Shakes(2015)
前作『Boys &Girls』でのルーツミュージックの解釈はわりと古典的でオリジナルに忠実な印象だったが、こちらはよりサウンドがクリアになり、ギターの一音一音が際立っていて、空白が増えた分、無駄な音を削ぎ落としたような印象。

モダンに昇華されたサウンドと、ブリトニー・ハワードのソウルフルなボーカルとの対比が素晴らしく、Alabama Shakesらしさというものがより顕著になったアルバム。

9. Shields/ Grizzly Bear(2012)
Grizzly Bearの中でも一番好きなアルバム。光と影を散りばめた、美しい印象派の絵画のような作品。

哀愁あるエド・ドロストのボーカル、コーラス、オーガニックな楽器の音色が輪郭をぼかすようにしながら合わさり、全体像を描いていく様子が、なんともドラマティックだなと思う。ラストの「Sun in Your Eyes」は思わず息を飲んでしまうように壮大で美しい一曲。

8. The Rip Tide/Beirut(2011)
この10年ずっと聴いていて、おそらく今後も聴き続けるであろう一枚。インディーロックとバルカン・フォークなどのワールドミュージックを合わせたような、見たこともない国への郷愁を呼び起こすかのような音楽。不思議で、温かく、美しい情景が眼に浮かぶ。

なぜかヒップホップやR&Bアーティストからの支持が高く、Chance the RapperやMacklemore & Ryan Lewisもサンプリングで曲を使用していたり、以前はSZAもインタビューで「ベイルートを聴いてる」と語っているのが興味深い。

7. The Epic/ Kamashi Washington
10年代は新世代ジャズのアーティストの活躍が目立ったが、中でもカマシ・ワシントンの功績は大きかったと思う。「秋の夜長にジャズはいかが?初心者も聴きやすい新世代のアーティストたち」の記事でも紹介したけれど、なかでもジャズの歴史を探究し、包括し、なおかつ現代風に昇華した「Epic」のインパクトは大きかった。

個人的にはマイルス・デイヴィスやジョン・コルトレーン、セロニアス・モンクらのモダンジャズにも通じる、大胆かつ鮮やかな流麗さを感じるアルバムだ。新旧問わず、多くのジャズファンの心に訴えかける作品に仕上がっている。

6. The Suburbs/Arcade Fire(2010)
「郊外で車の運転を覚えたんだ/君は僕らが生き残れないと言った/母の鍵を掴んで出発する」一曲めの「In the Suburbs」の歌詞でわかる通り、崩壊するアメリカの郊外と、そこに住む若者の葛藤についてのコンセプチュアルなアルバム。

そして、これはボーカルのウィン・バトラー自身の物語でもある。テキサス州のヒューストンに生まれ、9.11以降のアメリカ政権に見切りをつけてカナダへ移住した彼の、故郷への複雑な思いがこのアルバムには表れている。

独特の浮遊感と疾走感のあるサウンドは「ここではないどこか」へと向かう、郊外の若者が感じる倦怠、閉塞、焦燥をメランコリックに表現している。アルバムごとに違う魅力を見せてくれるバンドだけれど、全体を通した曲の流れが特に素晴らしい一枚だ。

5. The Idler Wheel Is Wiser Than the Driver of the Screw and Whipping Cords Will Serve You More Than Ropes Will Ever Do/Fiona Apple(2012)
学生時代からフィオナ・アップルが好きで、過去のアルバムも何度も聞いていたけれど、まさかこんなに素晴らしいアルバムに4作目で出会えるとは思わなかった。ヴォーカルとピアノとシンプルなアレンジのみでここまで生々しく、強烈な感情が伝わるのかと驚かされる。何より歌い手として変幻自在なフィオナ・アップルの素晴らしさが際立っている。

特別に目立った曲、ポップな曲があるというわけではないのだが最後まで飽きさせず、聴くほどに味わい深いアルバムとなっている。中盤以降に登場するジャズのようなドラムも良い。長いキャリアの中でも印象的な作品となった。

4. Carrie & Lowell/ Sufjan Stevens(2015)
最初に聴いたとき、ほぼ弾き語りのフォークソングで、ここまでオリジナリティーのある美しいアルバムを作り上げること自体が奇跡のようだと思った。統合失調症を患っていた母の死を巡って書かれたこの作品は、痛みと悲しみを伝えると同時に、穏やかで静謐な空気感に包まれている。

「あなたは十分な愛を手に入れたの?/どうして泣くの?あなたを置き去りにしてごめんなさい/でもこれが一番だから/正しいと思えたことはないけれど」(Fourth of July)
「泣くべきなのかな?見るもの全てがなぜかあなたに戻っていく/悲しむべきなのかな?感じるもの全てがなぜかあなたに戻っていく/あなたを悲しみから救いたい」(The Only Thing)
「Illinoi」は紛れもなく素晴らしいアルバムだったのだけど、個人的には今作を最高傑作に挙げたい。

3. To Pimp a Butterfly/ Kendrick Lamar(2015)
今作は過去の音楽からの影響を受けているそうで、特にクレジットの豪華さからわかるとおり、ジャズの要素が非常に強く見られる。アルバム制作に参加したサンダーキャット、ジョージ・クリントン、フライング・ロータス、ロバート・グラスパー、テラス・マーティンといった名前が10年代の音楽シーンにもたらした影響は計り知れない。

これだけの才能が集結したなかでなお、ケンドリックのラップの巧みさ、言葉を紡ぐセンスが際立ち、カリスマ的な魅力に溢れている。まさに現代の叙事詩人だ。

シリアスでどちらかと言えば暗い歌詞が多いアルバムだが、終盤に高らかに歌われるのは、”Ilove myself”のフレーズに集約される、これ以上ない自己肯定。アッパーで多幸感に溢れたこの一曲に、アーティストとしての新境地を見た気がする。

2. Modern Vampires of the City/Vampire Weekend(2013)
前作までのアフロビートやエレクトロの要素は薄れ、アメリカのルーツミュージックやクラシックの要素が濃くなっている。ヴィンテージの機材を使用したというサウンドはピアノを中心に、ドラムやアコースティックギターやオルガンなど、あくまでシンプルな構成で、得意とする美しいメロディーと文学的な歌詞を引き立てている。

ボーカルのエズラ・クーニグは以前に「バンドという形体が好き」と語ったが、インディーロックにとって苦難の10年代においてなお、常に進化し続けるバンドとして確固たる立ち位置を獲得している。

モノクロの日常風景に歌詞が流れるこのビデオを見るたびに胸を掴まれてしまう。タイムレスな魅力に溢れた名曲。

1. My Beautiful Dark Twisted Fantasy/Kanye West(2010)
ヒップホップの概念を変えてしまったアルバムであり、この10年を代表するだけでなく、今後も音楽史において語り継がれる名盤。カニエ・ウエストという稀代の天才にしか作りえない作品であり、約10年経った今も、その完成度の高さに驚かされるばかり。

「美しく暗く歪んだ幻想」のタイトルどおり、音楽の混沌から生み出された楽曲群は、これ以上なく芸術的でありながらも猥雑で、繊細なピアノやストリングスの旋律に、ストリートの喧騒を思わせるラップやサンプリング、これらが見事に融合し、まるで啓示のように高らかに鳴り響く。音楽ジャンルのクロスオーバーが台頭する2010年代の幕開けに、これ以上ふさわしい作品もないだろう。


Bon Iverのトラック”Wood”(09)をサンプリングし、ジャスティン・バーノンを迎えて制作したのがこちらの一曲。デヴィット・ボウイはこの曲を「”Runaway”同様、インディーロックのスウィートネスとヒップホップのハードさの共通点を示した、きらめくようなサウンドスケープ」と評している。

【次点】
Teen Dream/Beach House(2010)
Bon Iver, Bon Iver/Bon Iver(2011)
Helplessness Blues/Fleet Foxes(2011)
Random Access Memories/Duft Punk(2013)
Coloring Book/Chance The Rapper(2013)
Currents/Tame Impala(2015)
In Colour/Jamie xx(2015)
Lemonade/Beyonce(2016)
Drunk/Thundercat(2017)
The OOZ/King Krule(2017)

【総評】
ランキングにしてみると、インディーロックかジャズ、またはそのどちらかとクロスオーバーするヒップホップが多いですね。10年代はアメリカに住んでいた期間が数年あったのですが、その頃にヒップホップや、ルーツミュージックなどの黒人音楽にも興味が広がって、リスナーとしての自分にとっては大きな転機だった気がします。

あとは、実際にライブを観たことがあるアーティストが多く入ってます。アルバムだけで評価しようと思っても、どうしてもライブの良さを加味してしまいがちですね…。ちなみにこの中でのライブのベストは、Arcade FireのThe Suburbsの北米ツアーでした。カニエ・ウエストとフィオナ・アップルの来日はずっと待ってるんですが、なかなか叶わない!

音楽配信でCDにお金使わなくなっているので、今後もできるだけライブには足を運ぼうと思います。
長くなりましたが、いつになっても音楽は楽しいですね。20年代も良い出会いがありますように!

(Chia@skintmint)