【Music】2010年代のベストアルバム<Chia編>

2010年代のベストを振り返る企画、今回はChiaが選ぶアルバム編です。

10. Sound & Color/ Alabama Shakes(2015)
前作『Boys &Girls』でのルーツミュージックの解釈はわりと古典的でオリジナルに忠実な印象だったが、こちらはよりサウンドがクリアになり、ギターの一音一音が際立っていて、空白が増えた分、無駄な音を削ぎ落としたような印象。

モダンに昇華されたサウンドと、ブリトニー・ハワードのソウルフルなボーカルとの対比が素晴らしく、Alabama Shakesらしさというものがより顕著になったアルバム。

9. Shields/ Grizzly Bear(2012)
Grizzly Bearの中でも一番好きなアルバム。光と影を散りばめた、美しい印象派の絵画のような作品。

哀愁あるエド・ドロストのボーカル、コーラス、オーガニックな楽器の音色が輪郭をぼかすようにしながら合わさり、全体像を描いていく様子が、なんともドラマティックだなと思う。ラストの「Sun in Your Eyes」は思わず息を飲んでしまうように壮大で美しい一曲。

8. The Rip Tide/Beirut(2011)
この10年ずっと聴いていて、おそらく今後も聴き続けるであろう一枚。インディーロックとバルカン・フォークなどのワールドミュージックを合わせたような、見たこともない国への郷愁を呼び起こすかのような音楽。不思議で、温かく、美しい情景が眼に浮かぶ。

なぜかヒップホップやR&Bアーティストからの支持が高く、Chance the RapperやMacklemore & Ryan Lewisもサンプリングで曲を使用していたり、以前はSZAもインタビューで「ベイルートを聴いてる」と語っているのが興味深い。

7. The Epic/ Kamashi Washington
10年代は新世代ジャズのアーティストの活躍が目立ったが、中でもカマシ・ワシントンの功績は大きかったと思う。「秋の夜長にジャズはいかが?初心者も聴きやすい新世代のアーティストたち」の記事でも紹介したけれど、なかでもジャズの歴史を探究し、包括し、なおかつ現代風に昇華した「Epic」のインパクトは大きかった。

個人的にはマイルス・デイヴィスやジョン・コルトレーン、セロニアス・モンクらのモダンジャズにも通じる、大胆かつ鮮やかな流麗さを感じるアルバムだ。新旧問わず、多くのジャズファンの心に訴えかける作品に仕上がっている。

6. The Suburbs/Arcade Fire(2010)
「郊外で車の運転を覚えたんだ/君は僕らが生き残れないと言った/母の鍵を掴んで出発する」一曲めの「In the Suburbs」の歌詞でわかる通り、崩壊するアメリカの郊外と、そこに住む若者の葛藤についてのコンセプチュアルなアルバム。

そして、これはボーカルのウィン・バトラー自身の物語でもある。テキサス州のヒューストンに生まれ、9.11以降のアメリカ政権に見切りをつけてカナダへ移住した彼の、故郷への複雑な思いがこのアルバムには表れている。

独特の浮遊感と疾走感のあるサウンドは「ここではないどこか」へと向かう、郊外の若者が感じる倦怠、閉塞、焦燥をメランコリックに表現している。アルバムごとに違う魅力を見せてくれるバンドだけれど、全体を通した曲の流れが特に素晴らしい一枚だ。

5. The Idler Wheel Is Wiser Than the Driver of the Screw and Whipping Cords Will Serve You More Than Ropes Will Ever Do/Fiona Apple(2012)
学生時代からフィオナ・アップルが好きで、過去のアルバムも何度も聞いていたけれど、まさかこんなに素晴らしいアルバムに4作目で出会えるとは思わなかった。ヴォーカルとピアノとシンプルなアレンジのみでここまで生々しく、強烈な感情が伝わるのかと驚かされる。何より歌い手として変幻自在なフィオナ・アップルの素晴らしさが際立っている。

特別に目立った曲、ポップな曲があるというわけではないのだが最後まで飽きさせず、聴くほどに味わい深いアルバムとなっている。中盤以降に登場するジャズのようなドラムも良い。長いキャリアの中でも印象的な作品となった。

4. Carrie & Lowell/ Sufjan Stevens(2015)
最初に聴いたとき、ほぼ弾き語りのフォークソングで、ここまでオリジナリティーのある美しいアルバムを作り上げること自体が奇跡のようだと思った。統合失調症を患っていた母の死を巡って書かれたこの作品は、痛みと悲しみを伝えると同時に、穏やかで静謐な空気感に包まれている。

「あなたは十分な愛を手に入れたの?/どうして泣くの?あなたを置き去りにしてごめんなさい/でもこれが一番だから/正しいと思えたことはないけれど」(Fourth of July)
「泣くべきなのかな?見るもの全てがなぜかあなたに戻っていく/悲しむべきなのかな?感じるもの全てがなぜかあなたに戻っていく/あなたを悲しみから救いたい」(The Only Thing)
「Illinoi」は紛れもなく素晴らしいアルバムだったのだけど、個人的には今作を最高傑作に挙げたい。

3. To Pimp a Butterfly/ Kendrick Lamar(2015)
今作は過去の音楽からの影響を受けているそうで、特にクレジットの豪華さからわかるとおり、ジャズの要素が非常に強く見られる。アルバム制作に参加したサンダーキャット、ジョージ・クリントン、フライング・ロータス、ロバート・グラスパー、テラス・マーティンといった名前が10年代の音楽シーンにもたらした影響は計り知れない。

これだけの才能が集結したなかでなお、ケンドリックのラップの巧みさ、言葉を紡ぐセンスが際立ち、カリスマ的な魅力に溢れている。まさに現代の叙事詩人だ。

シリアスでどちらかと言えば暗い歌詞が多いアルバムだが、終盤に高らかに歌われるのは、”Ilove myself”のフレーズに集約される、これ以上ない自己肯定。アッパーで多幸感に溢れたこの一曲に、アーティストとしての新境地を見た気がする。

2. Modern Vampires of the City/Vampire Weekend(2013)
前作までのアフロビートやエレクトロの要素は薄れ、アメリカのルーツミュージックやクラシックの要素が濃くなっている。ヴィンテージの機材を使用したというサウンドはピアノを中心に、ドラムやアコースティックギターやオルガンなど、あくまでシンプルな構成で、得意とする美しいメロディーと文学的な歌詞を引き立てている。

ボーカルのエズラ・クーニグは以前に「バンドという形体が好き」と語ったが、インディーロックにとって苦難の10年代においてなお、常に進化し続けるバンドとして確固たる立ち位置を獲得している。

モノクロの日常風景に歌詞が流れるこのビデオを見るたびに胸を掴まれてしまう。タイムレスな魅力に溢れた名曲。

1. My Beautiful Dark Twisted Fantasy/Kanye West(2010)
ヒップホップの概念を変えてしまったアルバムであり、この10年を代表するだけでなく、今後も音楽史において語り継がれる名盤。カニエ・ウエストという稀代の天才にしか作りえない作品であり、約10年経った今も、その完成度の高さに驚かされるばかり。

「美しく暗く歪んだ幻想」のタイトルどおり、音楽の混沌から生み出された楽曲群は、これ以上なく芸術的でありながらも猥雑で、繊細なピアノやストリングスの旋律に、ストリートの喧騒を思わせるラップやサンプリング、これらが見事に融合し、まるで啓示のように高らかに鳴り響く。音楽ジャンルのクロスオーバーが台頭する2010年代の幕開けに、これ以上ふさわしい作品もないだろう。


Bon Iverのトラック”Wood”(09)をサンプリングし、ジャスティン・バーノンを迎えて制作したのがこちらの一曲。デヴィット・ボウイはこの曲を「”Runaway”同様、インディーロックのスウィートネスとヒップホップのハードさの共通点を示した、きらめくようなサウンドスケープ」と評している。

【次点】
Teen Dream/Beach House(2010)
Bon Iver, Bon Iver/Bon Iver(2011)
Helplessness Blues/Fleet Foxes(2011)
Random Access Memories/Duft Punk(2013)
Coloring Book/Chance The Rapper(2013)
Currents/Tame Impala(2015)
In Colour/Jamie xx(2015)
Lemonade/Beyonce(2016)
Drunk/Thundercat(2017)
The OOZ/King Krule(2017)

【総評】
ランキングにしてみると、インディーロックかジャズ、またはそのどちらかとクロスオーバーするヒップホップが多いですね。10年代はアメリカに住んでいた期間が数年あったのですが、その頃にヒップホップや、ルーツミュージックなどの黒人音楽にも興味が広がって、リスナーとしての自分にとっては大きな転機だった気がします。

あとは、実際にライブを観たことがあるアーティストが多く入ってます。アルバムだけで評価しようと思っても、どうしてもライブの良さを加味してしまいがちですね…。ちなみにこの中でのライブのベストは、Arcade FireのThe Suburbsの北米ツアーでした。カニエ・ウエストとフィオナ・アップルの来日はずっと待ってるんですが、なかなか叶わない!

音楽配信でCDにお金使わなくなっているので、今後もできるだけライブには足を運ぼうと思います。
長くなりましたが、いつになっても音楽は楽しいですね。20年代も良い出会いがありますように!

(Chia@skintmint)

【Music】2010年代のベストアルバム<ガーリエンヌ編>

今月いっぱいで、ついに「’10年代」が終了。ちょっとした総括にふさわしい時期でもあります。

ということでディケイドのMYベストを振り返る企画をお送りします。まずはガーリエンヌの「2010年代のベストアルバム」をどうぞ。

カニエ・ウエスト、ジャネール・モネイ、ラナ・デル・レイ、ロード…2010年代を彩った名盤たち

10. Wildheart/Miguel(2015)
2012年、Nasのアルバム『Life Is Good』にフィーチャーされていて存在を知り、本人名義の「Adorn」にハマって、それ以来ずっと安定して聴き続けているアーティスト。
『Kaleidoscope Dream』以降のアルバムは甲乙つけがたいけど、「あ、R&Bだけじゃなくて、こんなに音楽の幅が広い人なんだ!」と感心させられた本作をここでは選びました。


プリンスを意識したようなアートワークのとおり、セクシャルで親密、そしてロック要素も強い。2019年10月の初来日公演も素晴らしかった!(今気づいたけど、このビデオに主演している女性、ジジ・ハディットだ)

9. The Hunger Games:Mockingjay,Pt 1/Various Artsits(2014)
ディケイドを代表する映画『ハンガー・ゲーム』が、これまたディケイドを代表するアーティストLordeを監修に据えたサウンドトラック。Ariana Grande、Haim、CHVRCHES、Charli XCX、Tinashe、Pusha T、Major Lazerといった適材適所かつ旬の人材をそろえた素晴らしい仕事です。メンツは華やかだけど、ヒリヒリと一触即発しそうな気配が漂っている。

中でも出色なのがアルバムのリードトラックであるこちら。何かが這い寄ってくるようなサウンドに乗せて、闘いに向かうヒロインの心情が描かれている。Lordeはこういう、ドラマ性のある曲が抜群にうまいですね。

8. Norman Fucking Rockwell/Lana Del Rey(2019)
悲しみをたたえつつ、けっして弱くはない女性像を歌わせたら右に出る者がいない女王。
多作であるというのは、それだけでひとつの能力ですが、2012年に『Born To Die』でデビューしてからなんとすでに5枚目のアルバムです(本人は「わたし、10年に1度しか新譜を出しません」みたいな雰囲気なのに…)。その間、映画のサントラや客演仕事もしているという。

これまでアルバム、曲によってクオリティにバラつきがあったものの、本作は全編通して文句なし、ディケイドの終わりに、ついに決定版が出たなという印象。ただ純粋に褒めながら聴き惚れたいと思います。

7. Banshee/Kendra Morris(2012)
はすっぱでジャジーでブルージー、サイケデリック、そして懐が深い…つまりめちゃくちゃいい女のアルバム。
ヴィンテージ・ソウル風でありながらけっして懐古趣味ではなく、DJプレミアによるリミックス(「Concrete Waves」)が話題を呼んだのも当然と言える。ちなみにジャケット写真の背景は本人の家だそうで、剥製を集めるのが趣味だとか。


デビッド・ボウイ「Space Oddity」、ピンク・フロイド「Shine On You Crazy Diamond」、レディオヘッド「Karma Police」(!)などをカバーしたアルバム『Mockinbird』(2013)も最高なのでぜひ聴いてほしい。
beatink! 日本に呼んでくれ~!

6. 4 Walls/f(x)(2015)
今年起きたさまざまなことを考えると、本作にもつい余計な“意味”を付与しそうになる…けれども、バッキバキにクールで洗練されていて、同時に可憐さやキュートさも成立させている稀有なガールポップアルバム、という以上の説明はたぶん不要。

2016年の日本公演を見られたこと、本当に本当に心の底からよかったと思う。この世に永遠など何ひとつないが、あのとき会場全体で共有した、言葉にできない神聖な感銘を忘れることはきっとない。


それにしても、あまりにも浮世離れして美しいクリスタル様の尊さといったら。
僭越ながらファッションを真似っこした記事【Fashion】Get The Styles Of Krystal-f(x)! なりきりクリスタル もございます。

5. 2 Cool 4 School/A.Y.A(2015)
花園magazineのIt Girl。10代の頃から彼女を知っていたからこそ、本作が完成して嬉しかった。クリスティーナ・アギレラ、ビヨンセ、リアーナといったパワフルな女性アーティストを愛聴してきた素養と、スウィートでセクシー、ロック、そしてとことん真面目な人間性がそのまま昇華されているから。

のちの『Lil Romance』(2019)や『Pulp Fiction 2.0』(2018)に比べるとDIY感が強くて「若いな」と思うけど、実際そのとおりで、22歳の燃える魂がここには詰まっている。

She ain’t Plastic,She’s so Elastic,She won’t stay here,She’ll keep movin on!

アルバムリリース時のインタビュー【Music】A.Y.A『2 Cool 4 School』/”普通”になんて馴染めなくても もぜひご覧ください。

4. I Like It When You Sleep, for You Are So Beautiful Yet So Unaware of It/The 1975(2016)
10年代をかけて、もっとも重要なロックバンドに上り詰めたThe 1975のセカンド。
ピンクで統一されたアートワークに象徴されるように、パッと聴いた印象は80年代の雰囲気があり華やかで軽快。同時に緻密に作り込んであり、インスト曲の配置など、アルバム全体のバランスも絶妙でした(ちょっと長いけど)。

このバンドが奏でる音は若くてフレッシュだけど、実は荒削りな部分がまったくなく、つねに確信犯。それは、自分たちが時代を切り拓いていくことに自覚的なことの証左にほかなりません。

3.Dirty Computer/Janelle Monae(2018)
『The ArchiAndroid』(2010)とどっちにしようか迷った…2枚のアルバムの合わせ技で3位、というわけではなく、それぞれが名盤。『The Electoric Lady』(2013)も大好きだし、そもそもジャネール・モネイという人の存在そのものが本当に素晴らしい。

コンセプチュアルであることに重きを置いていた過去作に比べ、本作で響くのは、より自由奔放に、ナチュラルになった歌声。とはいえ、あらゆるサウンドの垣根の上を、蝶のようにひらりと舞い、かつ蜂のように鋭く刺すスタイルには変わりない。

オリジナリティあふれる音楽、パフォーマンス時のビジュアル、メッセージ性の強い歌詞…高度な次元のエンターテイメントを送り続けるジャネールは、次の10年間も、世界中の人々をインスパイアする存在であることでしょう。

2. Kiss Land/The Weeknd(2013)
華々しい活躍の彼のキャリアでは、あまり語られることのない本作ですが、個人的には群を抜いてしびれる。
本来の持ち味である密室性が、『ブレードランナー』的世界観のもとで妖しく花開いていて、脳内世界の路地裏に迷い込んだような気分に。

UKロックの影響もふんだんに感じさせるリードシングル「Belong To The World」。雷鳴が轟いて始まるこの曲だけで、短篇SF映画のよう。

本人はこのアルバムがそこまで売れなかったことで、ポップ方面に舵を切ったそうなのだけど、私は今後もしつこく聴き続けると思う。

1. My Beautiful Dark Twisted Fantasy/Kanye West(2010)
文句なし、ぶっちぎりの金字塔。プログレッシブ・ヒップホップの最高傑作。私の中では音楽という概念を超えて、コッポラ『地獄の黙示録』や黒澤明『乱』と同じような位置にあります。

リアーナやJay-Z、エルトン・ジョンなどの豪華ゲスト、キング・クリムゾンやエイフェックス・ツインのサンプリング、伝説的詩人ギル・スコット・ヘロンの朗読…豪華というよりも「手に負えない」ほどの情報量なのに、すべてがカニエ・ウエストというフィルターを通し、再構成され、まったく新しい音楽として提示されている。
極彩色の曼荼羅であり、生き延びるためのマントラであり、自身を一度炎に投げ入れることでしか生まれない音楽。どれだけ自分の内面を掘り下げればいいのか、どれだけ世界と対峙すればいいのか想像もつかない。


ピアノの旋律が美しくループするなか、「ベイビー、俺が狂い始めたら、一刻も早く逃げてくれ」と歌う。どうしようもなく愚かで切実な男の姿に胸を締めつけられる。

あっという間の70分間。無我夢中で没入して、終演後の拍手でようやく我に返る。何度体験しても震えるようなカタストロフィー。

【次点】
Katy B『On A Mission』(2011)
Drake『Take Care』(2011)
Daft Punk『Random Access Memories』(2013)
Sky Ferreira『Night Time,My Time』(2013)
LUNA SEA『A WILL』(2013)
Thundercat『Drunk』(2017)

【総評】
女性シンガーソングライターばかり聴いていた00年代に比べて、10年代は性別も人種もごちゃまぜに摂取した印象があります。フジロック、サマーソニックという大型フェスに定期的に参加するようになったこと、CDというフォーマットではなく配信で音源を得るようになったことも大きな変化かな。

自分の人生においても24歳~33歳という10年はかなり濃密でしたが、「常に新しい音楽を聴いていたい」というマインドは変わらず。イヤホンをしていてもしていなくても、常に音楽に依っていたと思います(なのに、自分ではまったく弾けないし歌えないというおもしろさ)。

ひとつ言えるのは、私は音楽にリラックスしたい、癒されたいみたいな気持ちはいっさいなくて、常にぶん殴られたい。「うおおお」って衝撃を受けたい。
次の10年もそういう自分である気がしているけど、変わるなら変わるで楽しみ。どちらにしろ、2029年もまたこうやってお会いできることを祈りつつ。

@girliennes

【Fashion】最適化されたクローゼットを求めて

今年の7月と8月、一着も服を買わなかった。おそらく大学生の頃から数えて初めてのことだ。しかしファッションに対する興味がなくなったわけではなく、むしろ毎日コーディネートを選ぶのが楽しい。

つまり33歳にして、MYワードローブが最適化してきたということだろう。これまで、流行のアイテムをひとまず取り入れてみたり、クローゼットのカラーパレットを埋めなければいけない気がして、もっていない色の服を買う義務感に駆られてきたりしたが、この1~2年は「本当に欲しいもの」を納得して買えるようになった。それは値段の高い安いはあまり関係がなく、安いものは安いもの、高いものは高いものとして、適材適所(私がいちばん好きな四字熟語だ)に揃えることこそが重要だと思う。というわけで、クローゼットのラインナップにはおおむね満足できている。

ここでは、そんなクローゼットを構成するアイテムをご紹介します。

●My Favorite Things

・ジャケット

カーディガンより断然ジャケット派。たぶん体型的にも、直線的なシルエットが似合う。
左から、大きなボタンが印象的なUnited Bambooのジャケットは、25歳ごろにセールで買ったもの。川上未映子先生が『早稲田文学』復刊第1号の表紙で着ていたのとお揃い。
真ん中はランバンオンブルーの薄手ジャケット。これも25歳ごろに買ったのをもう8年くらい着ている。
ゆったりサイズのツイードジャケットは、義理の姉からもらったGU。気負わずに羽織れるので重宝。

・ブラウス

カジュアルすぎる格好だとおしゃれに見えないタイプなので、ブラウスは定番。編集者っぽい格好をするときはまず選ぶ。

こちらの2着は、20代中盤の頃着ていたワンピースをリメイクしたもの。今着るには丈が短め、でも柄が気に入っている場合は、お直し屋さんでカットしてもらうことにしている。
黒い花柄のほうは、ワンピース時代はVネックが表側だったが、ペプラムブラウスにしたら裏返してボートネック風に着たほうがしっくりくるように。洋服は本当に着てみないとわからない。

・赤×紺の組み合わせ

字面だと派手に思えるけど、意外とシックな雰囲気になって大好きな組み合わせ。
秋冬によくはく靴下、東南アジア旅行に大活躍するウエストゴムのパンツ、ガウン風のMURUAのニットコート。

・クラッチ

鞄は平日は毎日同じリュックというほどあまりこだわりがないのだけど、クラッチだけは集めてしまう。
いちばん古いのは右下のGRACE CONTINENTALのビーズクラッチ。10代の頃に買って、振袖に合わせて持ったことも。ドレスアップのときに出番が多いのは、真ん中のシノワズリっぽい雰囲気の紫のクラッチ。
右上のは2018年のブルーノートジャズフェスティバル(結局中止になった)のグッズで、リアン・ラ・ハヴァスのライブに行ったら無料でもらえたんだけど、意外と使える。

・指輪とイヤリング
普段よく使うアクセサリーは、指輪とイヤリング。

こちらはスタメンリングたち。上段が大学生の頃買い揃えたnojess、2段目左はディオール、右はおニューのバーバリー、中央は2本セットの婚約指輪(イスラエルのartemerというブランド)で、下段左はアルティーダウード、中央と右がnichinichi。
ディオールやバーバリーというと高価なイメージがあるけど、ジュエリーではないので意外とお手頃、ふたつとも3万円弱。

スタメンイヤリング。左上の2つはLULA MAE。左右の形が違うのが粋で、結婚式でもつけた。
いちばん大きいスペースにあるのは、伯母の遺品としていただいたシャネルのもの。フェイクパールなのでとても軽く、今つけてもおしゃれです。

ネックレスやブレスレットは、前者はあまり今の気分じゃない、後者は腕時計とかち合ってしまうのがストレスという理由で、普段はあまりつけない。でもそれも、年齢によって変わっていくかも。

●コーディネートの考え方
スタイルが確立されている人を格好いいなと思う反面、自分自身は飽きっぽいので、なにかしら毎日テーマを決めて洋服を選んでいる。
その際に気にするのはこんなこと。

・色(同じような色を連続して着ていないか、プレゼンなので明るい色にしようなど)
・フォーマル度(ずっと社内作業か、社外の人と打ち合わせがあるか、取材ならとくに綺麗めにしようなど)
・仕事後の予定(女友達とおしゃれな店に行くから新しい服をおろそう、焼肉屋に行くから洗いやすい格好にしようなど)
・天候
・そのときハマっていること(直前に見た映画やライブにすぐ影響される)

たとえば1日中デスクワークの日であれば、袖をまくりやすいトップス+ウエストゴムのワイドパンツ。取材後に直帰で外食なら、きれいめなワンピース+ぺたんこ靴など。

ツイッターではときどき「実録1週間コーデ」として、コーディネートを公開しています。

・2019年夏編

・2019年秋編

1週間単位で振り返ると、そのシーズンのワードローブで便利だと思っているもの、たりないものが見えてきて面白い。秋編をつくって、黒以外のローファーやスリッポンが必要だなと思ったので、いま探しているところ。

●失敗したときは
とはいえ、まだ失敗することも。ブランド名+オフ率に惹かれて飛びついたり、試着せずにえいやっと買ったりすると、あとで後悔することが多々ある。

そういうときは、返品できるならする、できないならメルカリなどで転売するなど、なるべく早く手放すようにしている。損したなぁと思うものをいつまでも置いておくほうが精神的にストレスなので。経験上、手放したら意外とすぐに忘れるものだ。

あと、ポケットがないボトム、アイロンがけが必須の服も、よほどデザインが気に入ってなければ手を出さないようにしている。

しかし、そもそも絶対に失敗しない買い物など有り得ないし、それも含めてファッションを楽しめたらいいなと思う。

なにより大事にしたいのは、こうありたい自分を表現する格好をしたいということ。楽観的でふざけてて、ときどきトゥーマッチ。さらにその日の気分で華やかに装ったり、逆にラフにしたり。
気に入った格好をしている日の私は機嫌がいい、きっとそういうことだろう。

@girliennes

【セレブリティ】キャプテン・マーベル ブリー・ラーソンが手にした“C”

マーベル・シネマティック・ユニバースの映画としては初となる、女性単独主演映画として話題を呼んだ『キャプテン・マーベル』。
5月に公開されるMCUシリーズの重要作となる『アベンジャーズ/エンドゲーム』にも満を持して出演するスーパーヒーロー(ヒロイン)である彼女。演じるのはオスカー女優のブリー・ラーソンです。

しかしこれだけの超大作の主演女優でありながら、「ブリー・ラーソンって誰?」「どこから出てきた人?」と思われる方もまだ多いのではないでしょうか。
『ルーム』でアカデミー主演女優賞を獲るまでは現地でも無名に近かった彼女ですが、じつは10代の頃「アヴリル・ラヴィーン風のガール・ロックを歌うも、まったく売れなかった」歌手時代があったことを知っている人はさらに少ないはず。

アルバム『Finally Out Of P.E.』


黒歴史? いいえ、とんでもない。当時の音楽活動にこそ、大スターとなった今もブリーがもち続けるインディー精神、反抗心、内省のルーツを見て取れるのです。

ここでは主にブリーの10代の音楽活動を振り返りながら、彼女がキャプテン・マーベルにふさわしい理由を考察していきましょう。

キャプテン・マーベルに主演するブリー・ラーソン。世間になじめなかった少女時代

ブリー・ラーソンは1989年10月1日生まれ、アメリカ・カリフォルニア出身。6歳にして女優になることを目指し、演技のスクールに通っていたそう。
2001年から放送されたドラマ『Raising Dad』のエミリー役で初のメインキャストを勝ち取りますが、1シーズンで打ちきりに。その後もアレクサ・ヴェガやサラ・パクストンといった若手女優らが共演した『Sleepover』や、ジェニファー・ガーナー主演のロマンティックコメディ『13ラブズ30』(名作!)に端役で出演したりするものの、パッとする活躍はできませんでした。

当時のことをブリーはこう語っています。
「私はわかりやすいタイプじゃなかったから、女優として不利でした。人気者の女の子役を演じるほどかわいくないし、内気な女の子役を演じるほどおとなしくもなくて、オーディションを受けてもハマる役がまったくなかった」

そんな彼女にチャンスが訪れます。女優業の一方、11歳からギターを弾き始め、自作曲をサイトにアップしたりしていたブリー。映画『ピーター・パン』のウェンディ役のオーディションに落ちたとき、その失意をもとに「Invisible Girl」という曲を作曲したところ、地元の有力ラジオ局であるKIIS-FMのエアプレイを獲得。
それがきっかけでマライア・キャリーの元夫である大物プロデューサー トミー・モトーラ率いるカサブランカ・レコーズとの契約を手にすることになりました(ちなみにレーベル・メイトは当時飛ぶ鳥を落とす勢いだったリンジー・ローハン)。


2005年、16歳でデビューアルバム『Finally Out Of P.E.』をリリース。
時流にのったキャッチーなポップ・ロックに、キュートでなめらかなボーカルが組み合わさった内容で、ガールロック人気が高かった日本でも一部で話題になりました(筆者自身も購入したひとりです)。
とはいえ音楽面ではこれといった特徴はなく、本人が当時フェイバリットにあげていたMaroon 5、Gwen Stefani、The Clash、Kanye Westあたりの影響などもほとんど感じられません。パッと聴いただけでは、ブリーが言うところの「わかりやすいタイプ」の音楽です。

『Finally Out Of P.E.』の真髄は、その世界観。学校や世間になじめず、オーディションにも受からない、そんなイケてない10代の女の子の気持ちが、赤裸々に描かれていること。
「ほかの若いポップスターにない、あなた独自の持ち味とは?」という質問にも、当時ブリーはこのように答えています。

「たぶん、ほかの人が歌っていない内容の曲を書いていることだと思います。私のレパートリーにはラブソングがあまりないんですが、本当に恋愛経験が少ないから。私はただ、自分が自分の人生を生き抜いているということを歌詞にしているんです」


シングルとなった「She Said」は、本人が書いてこそいませんが、「今はクソみたいな人生だけど、いつか語るべきストーリーを手に入れてやる」というポジティブなメッセージが込められた曲。


ミュージックビデオでは、ハンバーガーショップでの冴えないアルバイトにうんざりしているブリーが、嫌なお客にいたずらしたり、バックヤードでギターをかき鳴らしたりするというドラマ仕立ての内容で、演技力をいかんなく発揮。最後に見せる表情はさすがです。

ほか、「Loser In Me」「Ugly」など、タイトルを見ただけでも思春期のやるせなさを感じさせるようなものばかり。
上述の、オーディションに落ちた経験を描いた「Invisible Girl」では

I’m not no J-lo or Miss Spears(私はジェニファー・ロペスでもブリトニー・スピアーズでもない)
I’m just a girl who disappears(ただの目に映らない女の子)

と、実在のスターたちの名前を歌詞に盛りこんだりもしています(韻も踏んでる!)。

なかでも特筆すべきは、アルバム名にもなっている「Finally Out Of P.E.」。
「体育の授業からついに卒業」というユニークなタイトルは、体育教師に嫌われていて、居心地の悪い思いをしていた自身の経験からきたものだそう。

I, I play guitar(私はギターを弾ける)
But in your class(でも先生あなたの授業では)
That won’t get me far(そんなの全然意味がない)
Please, give me a “C”(お願い、C評価をください)
So that I can be(そうしたらやっと)
Finally out of P.E(体育の授業から卒業できる)

しかしこのアルバムはレーベルのプロモーション不足などもあり、セールス的には惨敗。音楽SNS・Myspaceなどで細々と活動を続けるも、2010年にはMyspaceにて、ファンに向けてはっきりと音楽業界への失望を伝えています。

「ずっと作曲してきたし、ずっと演奏してきたけど、そういったことに幻滅している自分に気づいた。ユニバーサル(カサブランカレコーズの親会社)に所属していることで、素晴らしい機会や出会いに恵まれた。そのひとつが、最高のファンのみんなたち。だけど私自身が楽しめなくなってしまった。私は全部自分で曲を書きたかったのに、会社はそれを恐れていた。私はスニーカーをはいて自分のギターを弾きたかったのに、会社は私には『ヒールをはいた、風になびく茶髪の女の子』でいてほしがった」

女優業も引き続きパッとせず、また長い下積み時代を送ることになったブリー。
とはいえ音楽への情熱が消えたわけではなく、女優として稼げなかった時期は、むしろDJが本業という時代も。

出世作『ショート・ターム』の撮影中ですら、生活費のため、週末にはDJの仕事をしていたとか。
お気に入りはビートルズのレアな外国語カバーや、イエイエガールズ、ソウル。アナログ盤しかかけないというこだわりの持ち主だったよう。


また、エドガー・ライト監督のコメディ映画『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』(2010)にも、歌手役として出演。歌も披露しています。

その後、ドラマ『ユナイテッド・ステイツ・オブ・タラ』や映画『21ジャンプストリート』などで徐々に頭角を現し、『ショート・ターム』でのケアマネージャーの演技で絶賛を受けブレイク。そして2016年には、『ルーム』でオスカーに輝いたのです。

今回、アクション超大作である『キャプテン・マーベル』の主役を演じるにあたり、9か月以上にわたって徹底的にトレーニングを積むことに。大部分のスタントも自分でこなしました。

メイキング映像では、ダンベルを持ち上げたり、ウエイトを身体に巻きつけて腕立て伏せをする姿が見てとれます。
「目的は、役を深く理解すること。キャラクターの骨組みからつくり上げたいと思ったんです」とインタビューで語っているブリー。「体育の授業からどうか卒業させて」と訴えていた時代を思うと、感慨深いものがあります。


その成果は、この凛々しすぎる背中を見れば明らか。

けしてゴージャスな美貌や抜群のスタイルをもつわけではないブリーが、キャプテン・マーベルを演じること。それ自体に、とても大きな意味があったのではないでしょうか。

そんなブリーは女優業以外にも熱心です。4月5日からNetflixで配信開始した『ユニコーン・ストア』で初めて長編映画を監督。
またフェミニストを公言し、日ごろから性暴力被害者への支援活動にも取り組んでいるほか、次の目標について「映画業界における、さまざまな職業について学ぶことができる職業訓練学校をつくること」と表明して話題を呼んでいます。

地位におぼれることなく日々鍛錬し、手に入れた大きな力を、世の中がよくなるために使う。そんな姿はまさに等身大のスーパーヒーローであり、人を導く真の強さがあります。

ブリーの才能を信じてくれなかったという体育教師も、もう認めざるをえないでしょう。彼女が背負う“C”の称号――Captainの称号は、与えられたものではなく、自ら勝ち取ったものなのです。

@girliennes

参考:
http://www.vulture.com/2015/11/remember-that-brie-larson-was-a-pop-star.html
http://people.com/awards/inside-oscar-winner-brie-larsons-pop-star-past/
https://www.kidzworld.com/article/5424-brie-larson-interview
https://www.rollingstone.com/music/music-news/flashback-listen-to-oscar-winner-brie-larsons-pop-star-past-238543/
https://www.instagram.com/p/BSUmmFzjXrK/

〜このままでは終われない女たちの挑戦〜『マーベラス・ミセス・メイゼル』

こんにちは、Chiaです。冬の寒さが訪れた今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。今回は、もうすぐやってくるホリデーシーズンにぴったりなドラマ『マーベラス・ミセス・メイゼル』をご紹介します。製作総指揮を務めたのは、ドラマ『ギルモア・ガールズ』でも知られるエイミー・シャーマン=パラディーノ。Amazonプライムで2017年の11月にシーズン1が放送され、今年の12月5日にシーズン2が公開されたばかりです。そして、現段階ではシリーズ3までの製作が決定しています。

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2018年のゴールデン・グローブでは、コメディシリーズ部門で作品賞と主演女優賞を受賞しました。エミーではコメディのジャンルにおいて全7部門のうち候補に6部門が候補に選ばれ、そのうちの5部門を獲得。過去10年を遡ってみても、コメディで5部門以上獲得したのは2011年の『モダン・ファミリー』だけです。人気コメディドラマでも票が割れてなかなか受賞にならないことが多い賞レースでの、久しぶりの快挙と言えます。また、評論家のレビューをまとめたサイト「Rotton Tomatoes」では95%という高い評価を受けています。
では、このドラマの魅力とは一体何なのでしょうか。

マーベラスな専業主婦、ミセス・メイゼル

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物語の舞台は1958年のニューヨーク。主人公であるミリアム・”ミッジ”・メイゼル(レイチェル・ブロズナハン)は、夫のジョール(マイケル・ゼゲン)と二人の子どもがいる裕福な専業主婦。当時の企業広告で見られるような女性像を体現しており、完璧なヘアメイクとファッションに身を包み、アッパー・ウエスト・サイドのマンションで充実した生活を送っていました。50年代といえば、西欧では子どもを産んだ女性のほとんどが仕事を辞めて家庭に入っていた時代。アメリカでは出産後も働く女性は約11%ほどだったそうです。ミッジは名門女子大を優秀な成績で卒業した後、結婚と出産を経て専業主婦になりました。彼女は何事に対しても一生懸命、前向きな姿勢で取り組みます。同時代の郊外の若い夫婦を描いた映画『レボリューショナリー・ロード』や、それよりも少し後の1960年代のNYの広告業界を舞台とするドラマ『マッド・メン』で登場する郊外の専業主婦たちのように、倦怠と寂しさを内に秘め、もどかしい気持ちで日々を過ごしている女性ではないのです。エイミー・シャーマン=パラディーノは「彼女の時代において、ミッジはとても素晴らしい生活を築き挙げたの。だから彼女には誇らしく思って欲しかった。それに私が思うに、結婚して子供がいて幸せに暮らし、その生き方に満足することは何も悪いことではないのですから」とインタビューで話しています。
しかしあることをきっかけにミッジの暮らしは一変し、そこから物語は意外な展開を見せます。

主人公ミッジを演じるのは、『ハウス・オブ・カード』のレイチェル役でも知られるレイチェル・ブロズナハン。レイチェル自身はミッジについて「とても勇敢な人。私よりも勇敢です。それを伝えられたら良いと思います。」と語っています。その言葉通り、彼女は大胆で型破りな行動に出るのです。

2. スタンダップコメディーの世界

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その行動とは、なんとスタンダップコメディーの世界に飛び込むこと。「あること」をきっかけにして酔っ払ったミッジが訪れたのが、グリニッジヴィレッジにあるコーヒーハウスです。そこは、かつてボブ・ディランも演奏した伝説的な店「ガスライト・カフェ」(※1971年閉店)でした。その店では、夫のジョールも余暇にスタンダップ・コメディを披露していたことがありました。

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ミッジがこの世界に入ることになったシーンは最大の見せ場でもあるのですが、まるで本物の舞台を見ているようで引き込まれてしまいます。その臨場感をどう作り上げたのだろうと思っていましたが、実はエイミー・シャーマン=パラディーノの父親は、スタンダップ・コメディアン(ダン・パラディーノ)だったとか。Vanity誌のインタビューではこのように話しています。

「不思議なもので、私の父はスタンダップコメディアンでした。だから互いを笑わせようとばかりするユダヤ系の人たち(エイミーはユダヤ系)に囲まれて育ったんです。(中略)そして私はコメディーストアで働いていたこともあります。だからこのドラマは、誰か特定のコメディアンを意識的にオマージュしたものではなくて、私が経験した当時の感覚を元にしました。」

コメディーの世界を実際に見守っていた彼女だからこそ、フィクションの枠を超えたリアリティーを表現できたのではないでしょうか。華々しい成功とは別に、当時のコメディアンが抱えていた挫折や孤独、芸風や女性芸人に対しての風当たりの強さも描かれています。ミッジにその世界を案内してくれる人物として登場するのが、レニー・ブルースというのも象徴的であるような気がします。レニーはちょうど同じ時代に活躍した、ユダヤ系のコメディアンです。社会におけるタブーに切り込んだユーモアを得意としていましたが、数々の言動によって厳しく処罰されたために、アメリカの言論の自由における重要な人物となりました。このドラマは、時代に翻弄されながらも歴史を切り開いた、レニーのようなコメディ界の先駆者たちへの賛辞であるように感じます。また、ミッジ役のレイチェルは、初期の女性コメディアンであるジョーン・リバーズやジーン・キャロルといった人たちを参考に役作りをしたと言っています。

3. 台詞が織りなす人間ドラマ

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エイミーが手がけたドラマ『ギルモア・ガールズ』と同様に、このドラマでは登場人物たちがとにかくよく喋ります。まるでピンポンのように早いペースで繰り広げられる、ウィットに富んだ会話は、ミッジのコメディセンスを裏付けているかのよう。Vulture.comが「エイミー・シャーマン=パラディーノのドラマの特徴」として最初に挙げたのが、この”The One-of-a-Kind Dialogue”、つまり独特な対話です。コメディドラマの成功の鍵を握るのは、限られた人物関係の中でいかに面白い会話を引き出すかということではないでしょうか。日常の出来事が特別だと思えるのは、誰かが何気なく言った、気の利いた一言のおかげかもしれません。そういう瞬間が、このドラマには何度も訪れます。物語が思わぬ方向に進んで行くのも、膨大な量の対話から溢れた本心がきっかけになっていたりするので面白いです。

ではここで、登場人物たちを少しだけご紹介したいと思います。

ジョール・メイゼル(マイケル・ゼゲン)ーミッジの夫。叔父の会社の副社長を務め、時折スタンダップコメディーの舞台に立つ。

スージー・マイヤソン(アレックス・ボースタイン)ガスライト・カフェの従業員。

エイブ・ワイスマン(トニー・シャルーブ)ーミッジの父。コロンビア大学の数学教授。

ローズ・ワイスマン(マリン・ヒンクル)ーミッジの母。

モイシ・メイゼル(ケヴィン・ポラック)ージョールの父。アパレル工場経営者。

シャーリー・メイゼル(キャロライン・アーロン)ージョールの母。

4. 1950年代から現代へ

『マーベラス・ミセス・メイゼル』は旧体制の社会の価値観と、若い世代の価値観がずれ始めていた頃の話です。ミッジは母親が持つ価値観を受け継ぎながらも、自分だけの生き方を模索します。ミッジの大胆な行動力、機知に富んだ話ぶり、ステージ映えする美貌、そして何よりも、逆境を跳ね除けるエネルギーは、確かな変化を迎える時代にふさわしいものです。また、ミッジのマネージャーであるスージーに対しても同じことを感じます。

舞台となる50年代後半のニューヨークは、様々な文化が変容の兆しを見せていました。40年代にビバップと呼ばれるジャズが人気を博し、作中でも流れるチャーリー・パーカーらの音楽が全盛期を迎えました。また、アレン・ギンズバーグとジャック・ケルアックらがビバップの影響を受けて詩や小説を発表し、ビートジェネレーションと呼ばれるムーブメントを起こしました。ファッション界では、のちにVOGUE編集長になるダイアナ・ヴリーランドが『ハーパース・バザー』のファッションを担当していた時代です。ちなみに、ミッジの衣装もこのドラマのためだけに作られたものがほとんどで、オードリー・ヘップバーン、エリザベス・テイラー、グレース・ケリーなどを彷彿させる素晴らしいものとなっています。
60年代はいよいよ若者文化が花開く時代となります。1963年に出版されたベティ・フリーダンの『フェミニン・ミスティーク』はフェミニズム第二の波の先駆けとなり、後に起こる女性解放運動=ウーマン・リブに対しても大きな刺激となりました。60年代半ばにアメリカ国内ではベトナム戦争に対する反戦運動が起こり、各地で開かれた抗議デモには多くの若者が参加します。

『マーベラス・ミセス・メイゼル』を観て思うのは、時代が変化しても、変わらない人々の姿があるということです。どんなに打ちのめされても、人生という舞台に立ち続けようとします。他の誰かを演じるのではなく、自分自身でありたいというミッジ。それは過酷で、孤独な挑戦でもあります。だからこそ自分の信念を貫く彼女のコメディは、観客に笑いだけでなく、勇気と希望を与えるのでしょう。

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参考資料

https://en.wikipedia.org/wiki/Housewife

https://www.instyle.com/reviews-coverage/tv-shows/rachel-brosnahan-mrs-maisel-golden-globes-joan-rivers

https://www.vanityfair.com/hollywood/2017/03/gilmore-girls-amy-sherman-palladino-amazon-pilot-marvelous-mrs-maisel

https://ja.wikipedia.org/wiki/レニー・ブルース

https://www.vulture.com/2017/11/amy-sherman-palladino-tv-show-elements.html

【Travel】アメリカ・ニューオーリンズで「Sonder」に泊まってみた

こんにちは、ガーリエンヌです。

9月に夫婦で、アメリカ南部を旅行してきました。
2番目の目的地・ニューオーリンズではアメリカ駐在中の友人夫婦と合流。せっかくなので同じ宿に泊まることにしました。

最初はホテルやAirBnBで4人泊まれるところを探していたのですが、「Sonder」という新しい宿泊サービスを発見し、試してみることに。
とても素晴らしい経験だったので、詳細をお伝えします!

我々が泊まった部屋のリビング。ヴィンテージ風のシックなインテリアが特徴

アメリカの新しい宿泊サービス「Sonder」。予約方法や設備は?

Sonderは2014年から始まったサービス。キッチンや洗濯機などの設備がある、旅行者向けのサービスアパートメントです。
民泊との大きな違いは、Sonderという会社が一括して物件を所有・管理しており、インテリアや備品がコーディネートされていること。逆にホテルとの大きな違いは、フロントやコンシェルジュが常駐しておらず、チェックイン・チェックアウトを無人で行うこと。

今では、ニューオーリンズをはじめ、ニューヨーク、サンフランシスコ、シカゴ、マイアミ、ボストン、トロントなどの北米や、ロンドン、ローマなどヨーロッパ、計11都市で展開しています。さらにニューオーリンズだけでも150部屋以上ありました。

我々が泊まった「Vintage 2BR in Arts/Warehouse District」は、主要観光地であるフレンチクォーターから歩いて10分程度。
近年開発が進んでいるおしゃれなエリアで、近くにはAce Hotelも。またルイジアナ州のローカル高級スーパー・Rousesも歩いてすぐで、非常に便利な立地でした。

●2組で泊まってもプライバシーが保たれる
まず惹かれたのは、2bed/2bathroomの部屋が豊富なこと。2夫婦で泊まっても、寝室とトイレ&浴室を別々に使えると、プラバシーが守られてかなり助かりました。

●インテリアがおしゃれ
そしてインテリアがとにかくおしゃれ! 公式サイトから選ぶ際、ヴィンテージ風からモダンまでいろんなインテリアの部屋があって、楽しく悩みました。

我々夫婦が使ったシックなベッドルーム。ベッドは2人で寝ても十分な広さです。サイドの小机は、なにげに天板を引き出して使える構造で使い勝手よし。
広いウォークインクローゼットつき。アイロンも常備されています。

友人夫婦が使ったほうのベッドルーム。同じ部屋でもインテリアがまったく違って選ぶ楽しみがあります。

●使い勝手のいいキッチン&リビング

sonder.comより転載

部屋にはキッチンとリビングがあり、自宅のようにくつろぐことができるのも、ホテルとの大きな違い。テーブルで朝食をとったり、ソファでお酒を飲んでくつろいだりと、ゆったり過ごすことができました。

包丁やフライパンなど一通りのキッチンツールがあり、料理も気軽にできます。お皿、グラスも揃っています。

塩、砂糖、オリーブオイルといった基本的な調味料以外に、電気ポットやコーヒーメーカーも完備。ティーバッグはNY発の高級ブランド、Harney&Sonsのもの。「Japanese Sencha」があるのも嬉しい!

アメリカはどうしても外食費が高くなるので、キッチンで朝食や夜食を調理できるのはコスパ的にも助かりました。
料理するほどでなくても、電子レンジや冷蔵庫があると、なにかと役に立ちます。

●汚れ物を洗濯できる

sonder.comより転載

9月のアメリカ南部はまだまだ暑く、けっこう汗をかきました。そんなとき部屋で洗濯できたのはかなり助かりました!
アメリカの洗濯機は、洗濯機と乾燥機がセットになっているので、ベランダに干さなくても問題なし。洗剤は日本から1回用のミニパックを持っていきました。
帰国前日にも洗濯。旅行中の汚れ物を最大限なくすことで、「疲れて旅行から帰ってきて、たくさん洗濯しないといけない」という手間を省けたのもよかったです。

●お手頃なお値段
気になるお値段ですが、我々の部屋は3泊して約5万5000円でした。2組で泊まったので、1組1泊9000円程度。ニューオーリンズのホテル代の相場から考えると、広さ・設備・立地でこの価格はかなりお値打ちだったと思います。
値段は曜日や状況によって変動するよう。土曜日はお高めでした。

私たちは頼みませんでしたが、連絡すればタオルの変更などもすぐしてくれるそう。お風呂はシャンプー、トリートメント、石けん、ボディクリームの基本アメニティーがそろっていました。

またセキュリティーですが、建物の入り口と、部屋の入り口、2回暗証番号を入力する形式。
暗証番号は定期的に変更されるようで、滞在中も建物の入り口は一度変更されました。
変更内容はショートメッセージで届きます。問い合わせは24時間対応しているようです。

●返金が遅かった
ここまで褒めちぎってきましたが、気になった点がひとつ。それは、返金が遅かったこと。
当初booking.comで予約したのですが、日程変更があり、一度キャンセルしてSonder公式サイトから予約し直したという経緯があります。

booking.comはキャンセル無料期間内に手続きしたので安心…と思いきや、1か月たっても返金されない!
不安になってSonder公式サイトから問い合わせたところ、「ごめんごめん! すぐに手続きします」と返事が…。このあたりは日本の感覚で待っているだけではダメなときもあるかもしれません。返事がきてから10日以内にはちゃんと返金されました。

返金されるまで不安はありましたが、諸々の問い合わせに返事をくれるスピードが速いのはよかったです。

都市ごとの「Sonder」のインテリアを見比べるのも楽しい

11都市で展開しているSonder。どの部屋も洗練されたインテリアですが、都市ごとに特徴があるのも面白い。

sonder.comより転載

モノトーンがシックなニューヨーク。

sonder.comより転載

陽光溢れるリビング。マイアミ。

sonder.comより転載

スカル小物が効いているロンドンの部屋。

2人用、さらには6人用の部屋もあるSonder。建物によっては、プールやジムが使えるところも。
ファミリーや複数のカップルで旅行する際、宿の選択肢に加えてみてはいかがでしょうか。そして日本にも進出してほしい!(@girliennes)

【MUSIC】秋の夜長にジャズはいかが?初心者も聴きやすい新世代のアーティストたち

こんにちは、Chiaです。猛暑の夏が過ぎて涼しくなり、ホッとしている方も多いのではないのでしょうか。
今回は芸術の秋ということで、好きな音楽のジャンルの一つであるジャズについてお話したいと思います。

ジャズを聴くようになったのは、大学時代に卒業論文でビートニクについて調べたことがきっかけで、チャーリー・パーカーやディジー・ガレスピーに代表されるビバップのアーティストたちや、その後のモダンジャズに興味を持ったからです。ジャズクラブに初めて足を運んだのもこの頃でした。ただ、当時はまだ自分が背伸びしている気がして、ジャズ=大人の音楽という印象でした。

その意識が変わったのが、数年前ぐらいからでしょうか。ジャズと日本の歴史に関する本を読んだことと、ここ数年で「新世代ジャズ」と呼ばれる若いミュージシャンたちの活躍がめざましいこともあって、新旧問わずジャズを聴く回数が自然と増えていきました。ロックというジャンルに拘っていた自分も、以前から好きなバンドがジャズの要素を取り入れていたことに気がついたり、新たな発見があったのも嬉しかったです。

今回はそんな若いアーティストの中から、お気に入りの人たちを紹介したいと思います。モダン・ジャズの系譜を受け継ぐ演奏を聴かせてくれるアーティストもいれば、ロックやヒップホップとの融合で新境地を見せてくれるアーティストもいて、今後が楽しみになるばかりです。

Flying Lotus (フライング・ロータス)

先月のソニックマニアでも素晴らしいライブを見せてくれたフライング・ロータス。2014年にリリースされたアルバム『You’re Dead!』からの一曲、”Never Catch Me”は色々な意味で衝撃でした。美しいピアノの旋律、軽やかでタイトなドラム、唸るようなベース、ケンドリック・ラマーのラップ、全てが不思議な調和で成り立っていて、プロデューサーとしてのフライング・ロータスの凄さを物語っています。しかもジョン・コルトレーンが大叔父だと聞いて驚きました。

Thundercat (サンダーキャット)

フライング・ロータスが主催するレーベル、Brainfeeder所属アーティストで、”Never CatchMe”でも特徴的なベースサウンドを披露したのがサンダーキャットです。アルバムのジャケットの怪しさに怯んではいけません。6弦ベースを自在に操り、今までのベースという楽器の概念を覆すような表現に驚かされます。フジロックで観たライブも、あまりの超絶技巧ぶりに思わず笑ってしまうぐらいに凄かったです。

Kamasi Washington (カマシ・ワシントン)

同じくBrainfeeder所属のカマシ・ワシントン。サンダー・キャットとは3歳からの幼馴染で、ジャズミュージシャンの父親同士が知り合いだったとか。ジャズミュージシャン二世が、新世代ジャズの勢いを生み出してるんだなと思わされます。他のBrainfeeder勢と比べると、違うジャンルとのクロスオーバーというよりは、ジャズの歴史を深く探求しているようなスタイルが特徴。新旧問わずジャズ・アーティストとの親交が深く、高校~大学を通して音楽を専攻していたと聞いて納得しました。

以前観に行ったライブでは、アルバムにも収録されていたスタンダード・ジャズナンバー、”Cherokee”を情緒たっぷりかつモダンなアレンジで披露してくれたのも印象的でした。

Robert Clasper (ロバート・グラスパー)

先日東京ジャズで行われたハービー・ハンコックとの共演も記憶に新しい、新世代ジャズの代名詞ともなったロバート・グラスパー。ロバート・グラスパー・エクスペリメント名義でリリースされた『Black Radio』の噂を聞いたのはいつだったか覚えていませんが、初めて聴いた時はジャズというよりもR&Bやヒップホップの印象が強く残ったのを覚えています。

ロバート自身、インタビューで「ジャズ以外のファンへのアプローチ」を強く意識した作品であることを述べている通り、クロスオーバーによって既存の楽曲の新しい解釈、ファン層の拡大に成功した作品と言えます。エリカ・バドゥが歌う”Afro Blue”やレイラ・ハサウェイによるシャーデー”Cherish the Day”の美しいカバーがあるかと思えば、ラップも飛び出し、ロックからはデヴィッド・ボウイとニルヴァーナの楽曲をセレクトするなど、クロスオーバーを印象付けるエポックメイキング的な作品となったのは確かだと思います。

また、トリオやR+R=NOW名義の作品では、よりジャズ色が強い一面を見せてくれます。今後もシーンを牽引してくれる存在として活躍を期待しています。

Christian Scott (クリスチャン・スコット)

上で挙げたR+R=NOWにも参加し、トランペット奏者、作曲家、レーベルオーナーとして活躍するクリスチャン・スコット。NPRのTiny Desk Concertという動画が好きでよく観るのですが、そこで演奏したクリスチャンの民族音楽を感じるダイナミックなアレンジから、メロウで繊細な音色を奏でる表現力の豊かさに魅了されました。

2013年に参加したネクスト・コレクティブという名義でのアルバム『Cover Art』でBon IverやGrizzly Bearのカバーを披露していて、フェイバリット名前を挙げたRadioheadのトム・ヨークからの指名でAtoms for Peaceのライブにもゲスト参加するなど、インディーロックに造詣が深いことも、彼の音楽に大きな影響を与えているのだと思わされます。

Go Go Penguin (ゴーゴーペンギン)

場所を変えて、今度はUKのジャズシーンより。マンチェスター出身、ピアノ、ドラム、コントラバスのピアノトリオであるゴーゴーペンギン。ジャズとエロトロニカやポストロックの融合と称される彼らの音楽は、滑らかで緩急自在で心地良いのにスリリング。生演奏しているということを忘れてしまいそうなぐらい正確で、3人の息がぴったりと合わさっています。

ピアニストのクリスは「エレクトロニックサウンドやテクニックを生の楽器で表現したり、真似したりするのはとても楽しい」と語っていて、11歳から聴いていたUnderworldが好きだそうです。他にも坂本龍一やDabrye、Daudi Matsiko、Mark Pritchardなどの名前を挙げています。(※1)秋には来日公演を控えていて、冬にはロンドンのロイヤル・アルバート・ホールでも演奏する彼らから、今後も目が離せません。

(※1)REVOLVER「A HUMDRUM STAR: THE GOGO PENGUIN INTERVIEW」
http://projectrevolver.org/features/interviews/humdrum-star-gogo-penguin-interview/

King Krule (キング・クルエル)

ロンドンのジャズシーンについて、昨年あたりから海外でも日本でも、色々な記事を目にするようになりました。以前からダブステップやグライムなどのジャンルを生んだ南ロンドンの音楽シーンに注目が集まっていましたが、ジャズも同じく南ロンドン出身の若いアーティストが目立つようになりました。SNSやSpotifyの普及により、ジャンルを問わずに聴くリスナーと演奏するアーティストが増え、双方にとって良いサイクルが出来上がっている気がします。

キング・クルエルことアーチー・マーシャルの音楽を表すとすれば、ロック/パンク/ジャズ/ブルース/ダブステップetcという雑食な感じなのですが、好んで聴いていたというジャズは重要な要素を占めています。かと思えば、90~00年代ロックの影響もギターリフに見え隠れするのが面白い。

まだ弱冠24歳だとは思えないしゃがれた声で呟くように歌うボーカルスタイルは、チェット・ベイカー、イアン・デューリー、ジョー・ストラマーに影響を受けたそう。(※2)また、出身地である南ロンドンのペッカムの音楽シーンが拡大しすぎたと感じていることなどをSPIN誌に語ってるのも興味深いです。(※3)

(※2)Pitchfork
https://pitchfork.com/features/rising/8696-king-krule/

(※3)SPIN 「King Krule Shares the Secrets of The Ooz」https://www.spin.com/featured/king-krule-the-ooz-interview/

Joe Armon-Jones (ジョー・アーモン・ジョーンズ)

最近気になっているのが、ジョー・アーモン・ジョーンズ。キーボード奏者であり、UKジャズの中でも重要なバンドであるエズラ・コレクティヴの一員でありながら、コンポーザー/プロデューサーとしての役目も果たしています。また、彼も新世代ジャズの他のアーティストと同じく、ピアニストの父親と歌手の母親を両親に持ち、ジャズを聴いて育ったというバックグラウンドがあります。

昨年リリースしたMaxwell Owen(マックウェル・オーウェン)とのEP『Idiom』も充実の内容でしたが、今年の春にリリースされた初のソロアルバム『Starting Today』ではロンドンのジャズシーンを彩る豪華なゲスト陣と共に、色彩豊かなサウンドを聞かせてくれます。Brainfeederのアーティストを引き合いに出されますが、このアルバムはジョーが4~5ヶ月かけて自分でミックスとプロデュースを手掛けたそう。(※4)Flying Lotusと同じく、雑食な音楽をまとめ上げるプロデューサーとしての手腕の鮮やかさを感じる一枚です。
(※4)bandcamp Daily 「Joe Armon-Jones Captures the Pluralistic Grooves of ModernLondon Jazz」
https://daily.bandcamp.com/?s=Joe+armon+&submit=Search

いかがでしたでしょうか。私はこの秋もいくつかのジャズライブに足を運びたいなと思っています。
気になった方は、ぜひ一度聴いてみてくださいね。(Chia@skintmint)

参考資料
Fader 「9 U.K. Artists Making Jazz Feel Brand New」
http://www.thefader.com/2016/12/19/uk-jazz-artists-shabaka-hutchings-yussef-kamaal
The Guardian「The UK jazz invasion: ‘I’m sure that some purists wouldn’t even call it
jazz’」
https://www.theguardian.com/culture/2017/mar/15/jazz-london-moses-boyd-unitedvibrations
i-D「jazz, but not as you know it」
https://i-d.vice.com/en_uk/article/qvwj3m/jazz-but-not-as-you-knew-it
XLR8L 「London’s Experimental Jazz Renaissance」
https://www.xlr8r.com/features/londons-experimental-jazz-renaissance